人間とファンガイアの共存などありえない。
そこにあるのは殺し合いだけだと叫ぶカブトムシさん。
それは人間との共存を夢見ながら、人を襲うファンガイアの衝動を心に抱えるワタルの闇そのモノと言っていい。
今週も嬉しい會川イズム(え)。
本家ではビミョーに掴みきれなかったファンガイアという存在が、會川さん得意の善悪対比論が盛り込まれることで途端に引き締まりますね。
このキバ編を観ていると、「仮面ライダーキバ」って凄い面白そう!と思えてしまうのが痛快でなりません(え)。
人間の女を愛し、人間との共存という夢を抱いたカブトムシさん。しかし、夢は破れ、絶望する。
劇中で言及されてはいませんが、カブトムシ父さんはお母さんを自らの手で殺してしまった…というトコでしょうか。哀しいファンガイアの性…ですね。
息子は父を倒し、父を越える。
そして父の果たせなかった夢を果たす。
「キバ」の最も重要なモチーフといえばやっぱり“親子”でしょうね。
え、いや“ボタン”では無いと思いますよ?
父の果たせなかったコトを息子がやり遂げるというのは、ベタかもしれませんが“親子”モチーフとしてキレイな形を作り出せる展開だと思います。
本家の方は父親の方が強くて息子の方が未熟な存在だったとか、そもそも同時間上に存在する親子じゃないとかで、こういう展開はあまりありませんでしたよねぇ…。
でも、凄くドラマとしてカタルシスあって好かったと思います、うん。
ワタルの本当に行きたい場所に連れてってやる。
今回、迷えるワタルを救ったのは士ではなくユウスケ。
ついこの間までは不完全な白いクウガみたいな何処か未熟な人だったのに、今のユウスケはちゃんとクウガになって人を救えているのだなぁ…と思えます。
人間とファンガイアの共存の為に王になりたいと願う心と、そんなコトは出来ないと思う心のジレンマから王になれないワタル。
だけどユウスケが、友達がいたから、ワタルは王になりたいと心を決められた。
一人では行けない場所にも、二人なら行ける。ユウスケはちゃんとワタルの行きたい所へ連れて行ったのだなぁ…。
ワタルがファンガイアの玉座に着こうとしなかった理由。
それは好きになった人間の命、ライフエナジーを欲してしまうファンガイアの衝動が自分の中にもあるから。人間を傷付けてしまう衝動を持つ自分が、人間とファンガイアの共存を掲げる王になるなどと不可能であると、誰よりも知っているから…。
だから人間とは近づかず、誰とも友達になろうともしていなかった…。
これって…オリジナルの「キバ」で結局何だか分からないうちに済し崩されたモチーフの一つである“この世アレルギー”ってコトですよね…。
本家ではどうして渡がこの世アレルギーだったのか、はたまたそこに物語上のどんな意味があったのかなどが、正直イマイチよく分かりませんでした。
しかし今回の「キバの世界」のワタルは、自分の中のファンガイアの衝動によって人間を傷付けたくないという思いがあり、そのことで誰とも近づかないのだという明確な回答が与えられています。
ちゃんと“この世アレルギー”にも意味があっただなんて!(おい)
まぁ、本家「キバ」の渡の方は、自分がファンガイアであるという認識が無かったもんですからして、結局何でこの世アレルギーだったのは分からないんですけどね…。
そりゃあさ、1年50話かけてやる物語と2話だけで語るしかない物語ではテーマを表す上で設定が変わるのは当然です。
でもさぁ…なんかもうこっちの「キバの世界」を観ちゃうとね、むしろ何で本家「キバ」はこういう設定じゃなかったんだろうとか思えてきてならんわけよ(え)。
だって、明らかにこっちの方がテーマを明確に表現できている設定なんだもん!(うわ)
やっぱ…「キバ」は設定は悪くなかったんだと思うのよね。
問題はその設定を活かす気が無かったってだけでさ(だけ?)。
親子、人間とファンガイアの共存、キングの座、この世アレルギー、ヴァイオリン、ドガバキフォーム…。
まったく、どのモチーフも「仮面ライダーキバ」より明確に、しかも納得できる描写に落とし込まれているじゃーねえか。本家よりもキレイにまとめ上げるだなんて、とんだ原作への冒涜だぜ(おい)。
てか、オリジナルのとても大きなモチーフである“ドロドロした痴情のもつれ”てのはどうして抽出しなかったんでしょうね、すごく不思議です(ちょ)。
「キバの世界」は「仮面ライダーキバ」のパラレル。もう一つの可能性。
じゃあ、オレはそっちのキバが放送している世界に行きたかったよ(こら)。
気付くとオリジナルと比べてどーこー言ってばかりですが…。
だって悔しいだろ! 「ディケイド」のキバがこんな面白いだなんてよー!(うわ)
何故かキバーラもレギュラーになったようだし…
チクショー…面白えなぁ、ディケイドゥ…(地面に拳を打ちつけながら)。
⇒
仮面ライダーディケイド 各話レビュー
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コメント
確かに何で弓矢だろう?
確かに2話と思えない、物語のまとまりでした。
ドカバキフォームも演出として見事でしたし。
そんなシリアスな話のなかで、
ファイナルフォームライド直前のキバとディケイドのしぐさが妙に笑えましたが。
ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」
キバ(ねぇ何するの?)
ディケイド(いいから前向けって)
って感じで。
スーツアクターさんの見事な演技でした。
2009/02/23 23:55 by 紅 真太郎 URL 編集
今回直接ストーリーにバイオリンは絡んでいませんでしたが、やっぱりキバにおいてバイオリンは大事なファクターなんだなあと。
奪われたキバの鎧…デザイン的にダークな役割が似合うと思っていたので、今回の悪キバは素敵でした。
2009/02/23 23:57 by ソラフ URL 編集
キバアローの鏃部分ってもしかしてチn(ry
今回の被害者はガルルさん達ですね。
結局食べられてそれっきりですし。
もう、ワタルはタツロットが出るまでフォームチェンジ出来ないのか・・・。
ワタルが好きになった人を捕食したくなるのはファンガイア全般の本能というより、個人(或いは家系?)的な嗜好の問題なのだと思います。
原作でもライノさん(ドッガハンマー被害者1号)は夢破れた者のライフエナジーが好きだとか言ってましたし。
こう考えるとワタルの悩みは運が悪かったと言えるのかも知れません。
もしこれが仮面ライダー753(もしくは193)の世界だったらケイスケが何やかんやでボタン集めや管理世界の実現に目覚める話になったかも。
話のクオリティに関しては逆に考えるんだ!
原作は一年もあったから風呂敷を広げすぎて畳み切れず迷走したんだと。
ちょっと追記
カブトムシさんはひょっとして最期に自分で叩き壊してしまったバイオリンを直しに来ていたのでしょうか?
忠告の為とはいえ、自分が傷つけてしまった息子へのせめてもの贈り物としてか、或いは自らが手に掛けてしまったであろう最愛の人への最期の未練か・・・。
もしそうだとするならばその行為に込められていた気持ちを考えると・・・・・・やっべ、ちょっとウルっと来た。
最後に言っておく!絵の下敷きになったキバーラ萌え。
2009/02/24 01:45 by P3m URL 編集
最終回お疲れ様でした!
まさか某エヴァンゲリオンのように、間をおいて視聴者を油断させて、こんな見事な完結編をものするとは。最終2作をあえて自分で書かずバトンを託した敏樹の英断ですよ!
ワタルのこの世アレルギーにも、王が人前で食事しない理由にもきちんと落としどころをつけて、人間とファンガイアとの共生にいかなる課題があるのか、そのリスクをわかりやすく視聴者に示したうえで、あえてその困難な道に身を投じるワタルの決意と信念を見せる。すごいよ!ワタル、君は本物のヒーローだ!
いや、本当に。実によい最終回でした。
……え?既に終了して……い……る……?
2009/02/24 16:59 by ましゃと URL 編集
FFRが弓矢なのはブロンの視聴者認知度が低いからだろうか……
すばらしいとしか言いようがないです。
次回の「龍騎の世界」は公式予告を見る限り、「クウガの世界」や「キバの世界」以上に設定を変えてありますね。一体どうなるのか気になります。
あと少し失礼かもしれませんが、キバーラに指を噛まれたときの鳴滝の顔が気持ち悪いですwww
2009/02/24 18:56 by マタカ URL 編集
今週のディケイド
>親子、人間とファンガイアの共存、キングの座、この世アレルギー、ヴァイオリン、ドガバキフォーム
本当に同じ材料(設定)なのに、美味しく調理されちゃいましたね(苦笑)
特にドガバキフォームはオリジナルだと一発だけのネタ形態で終わったのに、ディケイド版だと禍々しい強敵として表現されていて良かったと思います。
それでは、乱文失礼しました。
2009/02/24 19:45 by uepi- URL 編集
◇コメントありがとうございます!!!◇
キバとディケイドの素っぽいリアクション好かったですね。
何度も巻き戻して見てしまいます。キバ…かわいい。
ドガバキフォームもなかなかでした。
あれはディケイドのオリジナルフォームなんですよね?
え、だってキバに出てきて無いでしょう?
あんなフォームが活躍したコトなんて全然記憶にありませんもん。
いやー、わざわざこの話の為にオリジナルフォーム作るとは、太っ腹ですなー。
>ソラフさん
確かにこれでバイオリンが物語の上で何か効果があったら、さらに素晴らしかったでしょうね。
でも原典キバでもバイオリンは結局のところ別に何の関係も無いぐらいスルーされていたので、こんなモンでも凄いんじゃないでしょうか(うわ)。
え、てゆかキバってバイオリンの話でしたっけ?
ウソだよ。だって結局バイオリン作ってなかったもん!
>P3mさん
ワタルはフォームチェンジ出来なくても、ディケイドはカードがあるからチェンジ出来るというゆがみ…。
やっぱり、あのベルトがあれば他のベルト何もいらねえ!カイザが欲しがるのも分かります(え)。
カブトムシさんがあの家で暮らしていたという事は、バイオリン職人であった可能性も否定できず、壊したバイオリンを直してくれたのかもですね。
結局人間態でワタルに会うことは無く、親子として触れ合うコトの出来ない父のたった一つの贈り物…。
触れ合えない親子要素も原典キバに沿ってるんですね。
>ましゃとさん
一月に番組が終わった時は「え、何処が終わったの?」と思う事しきりでしたが、まさかこんなカタチで真の最終回が用意されていたとは、上手い事を考える人もいるものです。
設定や伏線を見事に消化し、キレイなドラマを見せてくれました。
そりゃそうですよ、あんな未来からネオファンガイアが来た!で終わるなんて最終回はフェイクに決まっているじゃないですか。
井上センセはミスリードの天才だな!
>マタカさん
クウガ、キバとどちらも白倉Pの担当していないライダーでしたが、龍騎は自分で作った子ですからね。どう変えようと誰にも文句なんて言わせる必要ないですよね(え)。
次の裁判設定もそうですが、2話でテーマを描く為の設定改変がどれも非常に巧みなんですよねー。見事のものです。
あーこの設定で本家のキバもやってくれていたら…
>uepi-さん
同じ材料でも巧みの技で美味しく調理されたのか…それともレジピ通りやればこのぐらい美味しくなるモノを本店ではレシピ見ずに作っていたのか…謎は深まります。
ディケイドでは過去作のスーツの補修などでとんでもなく忙しいという話ですが、ドガバキはきっと必要なかったでしょうね。
何の補修も必要ないぐらいピッカピカだったと思います。まるで新品みたいだ、わお。
2009/02/25 00:55 by TJ-type1@管理人 URL 編集
そしてユウスケがいい奴すぎて泣かせます
例えば健吾がこんなキャラだったら
名護も士のようにブレない芯のあるキャラだったら…(遠い目
キバ女性陣が束になっても勝てないくらい、夏みかんちゃんのキャラも可愛いですしね
理想のキバを翌年直ちに、添削のように描かれてこれは恥ずかしいかも…
2009/02/25 09:16 by やまちー URL 編集
◇コメントありがとうございます!◇
キバといえば、「視聴者が感情移入できるポジションの人が誰もいない」コトがアイデンティティなのに、全くもってこちらのキバはどうしたコトでしょう。
キャラを無駄なく生かすとか、カタルシスがあるとか、これが本当にキバなんでしょうか。ボクたちが夢見たあのキバなんでしょうか(ちょ)。
もう一回、やり直すってコトは出来ないんですかね…あはは。
2009/02/26 00:10 by TJ-type1@管理人 URL 編集