■チビッコから大きなお友達まで…今回の映画の目玉、観客参加型システムであるミラクルライト。
映画館の劇場で光の発するモノを配布するという、これまでの概念を覆すこの戦略、初めて聞いた時からすこぶる気になるポイントでありました。
幻燈式映写方法を取る現在の映画にとって、幻灯機以外の光というのは出来る限り排除しなければならないのが定石です。
余計な光があればあるほど、スクリーンへ映す映画は見辛くなってしまいます。シネコンはその辺計算されていて、出入り口の光はスクリーンへ届かないように設計されているし、上映が始まると非常口の緑の光さえも消えてくれます。
そうまでして余計な光の進入を防ごうと劇場が頑張ってくれているのに、よもや配給側が映画の入場プレゼントで懐中電灯を配るだなんて!
きっと苦笑いを隠せなかった劇場主がいっぱいいたのだろうと察してあげましょう。
しかし、そんな理屈も関係なしに始まったのはココナツミルクによるライトの説明。単にライトの説明と観客へのご挨拶ではあるのですが、コレ…掴みとして相当ヤラれました。
「こーんにーちわー!」とキャラクターショー宜しくココナツが観客へ元気いっぱいご挨拶。続いて人間体へと変化し、今度は大きなお友達へご挨拶。
だぁぁ―――…
何て見え見えのお母さん対策なんだぁ~…。てゆか、大きなお友達への配慮を、登場人物自ら公然と行ってくれるという思いもよらない事態に、完全にハートが掴まれてしまったあるよ。
その後のココの流血騒動etc なども含め、やーけーに、この部分の毒ッ気が強いっすよねぇ。
プリキュアという、健全である事がどうしたって義務的に存在している女児向け作品でありますからして、せめて映画ぐらいは溜まった毒を少しぐらい吐き出させやがれ、という気持ちが見え隠れするのは…気のせいでしょうか。
映像的な遊びも含め、最初からテレビでは出来ない事をやってのけてくれてますよねぇ。まぁ毒ッ気自体はここがクライマックスではありましたが。
そして本編。
余計な事は特になく、とりあえず皆してテーマパークに出発です。
そしてOPがありません!
チイッ、映画だけどOPという、結構そのテレビを大事にするアイデンティティには毎回期待しているのに。去年は上映時間短かったからしゃーないけど、今回は…
ブツブツ…そんなこんなで、プリンセス&プリンスの姿になってアトラクションを楽しみます。
お花畑で追いかけっことか、正直何が楽しいのか分かりませんが、きっと女の子なら一度は憧れる、そんなシチュエーションってコトなんでしょう、たぶん…きっと…おそらく。
男の子なら誰もが、恐竜の背中にまたがってみたいと願うのと同じコトなのです(え?)。
でも、オーホホホホホホ…な、高笑い堪能体験はちょっとシュールで面白かったなぁ。
あの高笑いの強烈さに紛れて、うららがピンキーをキャッチュしたのが実は伏線になっているだなんて、微塵も勘付きませんでしたしね。
だから、後々それが伏線だったと明かされた件では「うはっ! レモンのくせにお手柄じゃん!!」と、普通に虚を突かれました。
あぁ、まんまと映画堪能してるし、オレ!
(…という事は、あれで55匹全部ゲットしちゃったってコトになってしまうんですが…。 結果的に大戦果…てゆかこの番組ここで終わりじゃね?)
いつの間にやら偽者と成り代わっていたココとナッツ。
しかし、それをも見抜く夢原さん。
「ココは私が呼んだら、絶対こっちを向いてくれるもん!」
相変わらず成田さんはのぞココ好きだなぁ~…んもう。
ギリンマさんを悪者と気付いた時といい、ハデーニャさんが偽理事長だと気付いた時といい、夢原さんの驚異的洞察力と直感力は映画でも冴え渡る。
もしかしたら軽く機嫌が悪いだけかも、とかは考慮に入れません。自分が信じたモノ、それが世界の真実なのだから!(え?)
囚われのココナツ王子を救い出すため、己の身体一つで敵と戦うお姫様、という何とも現代的ヒロイズムが映画でも炸裂。
「女性上位もここまで来たか」(by SF短編集「換身」より)
その台詞がそのまんま過ぎてギャグにもならないですよ、ええ。
そしてコワイナーとのバトルへもつれ込みます。
テレビの時よりも、チームである事が強調された戦い方をしていたようで嬉しいです。
でも正直、このバトルのテンポが速すぎて、もう全然目が追っつかねえっす。普段ならビデオをスロー再生して動きを確認するところですが、映画ではそうもいかず、ただただ凄まじい速さに飲み込まれていました。
もう、歳なのかな…ふぅ。
ザ・たっちのお二人は、意外と意外とあれでもなかったです。(どれ?)
別に上手いわけじゃないけれど、当人そのまんまって感じのキャラクターだったので違和感も無かったです。
チョイ役なのかと思っていたら、結構出張っているし、頑張りまで見せてくれます。つまり企画のホントに最初の方から二人を想定して作られていたワケね。宣伝の為とはいえ、商業映画は大変だなぁ…。
敵方の声優さんも豪華ですよねぇ…
つか、シャドウって男かと思ってたら女の人だったのかぁー…て。いや、朴路美さんだし、もしかしてやっぱり男ってコトもあるかも(おい)。
で、結局ミラクルライトはどうだったのかというと、案の定、別にスクリーンにライトの蝶が映し出されるワケもありませんでした。
でも、観客参加型という試みに関しては、「なるほど」と思わせる作りになっていたと思います。
すごい大雑把に言えば、昔からある、ヒーローショーなんかで「みんなの応援が必要なの! もっと大きな声でお願ーい!」みたいなコトと同じです。
しかし、かといってチビッコ以外のお客さんがお寒い感じになるというワケでもなく、邪魔にならず観ていられる範疇だと感じます。
それに、この映画… というかプリキュアという作品自体が、「仲間がいるから強くなれるッ!」というテーマを元々持っているだけに、「お客さんも含めた皆の力があるからプリキュアは強くなれるんだッ!」という展開が割と自然に、スムーズに行われていたと思います。
まぁ、無くてもイイといえば…無くてもイイですけどね(ちょ)。
しかし、あっても邪魔にならないし、お寒くも無かったのはよく出来ているなぁ、と思います。「仲間の力」というテーマがいかにも取って付けたモノではなく、これまでずっと培って来たモノだからこそ、こうしたお客さん参加型映画というイベントとして成立可能なんですよね。
■ダークプリキュア5!クリスタルとシャドウの力によって誕生した五人の戦士、ダークプリキュア5。
力は互角。しかし、彼女たちはシャドウの力によって疲れるコトが無いという。
力を消耗しない。それは明らかにオリジナルのプリキュアよりも強いことを意味しています。
しかし、強いからこそ、彼女たちに仲間は必要ないのです。
ダークドリームは訊く、どうして仲間と一緒にいて貴方は笑っているの?
ダークルージュは訊く、友達なんて邪魔だって思ってるでしょ?
ダークレモネードは訊く、人の為に歌ったり、お芝居したりして何になるの?
ダークミントは訊く、皆を守るなんて、損な役回りでしょ?
ダークアクアは訊く、役に立たない、使えない仲間なら要らないでしょ?
彼女たちは鏡に映った自分自身。
自分の中にあるもう一人の自分。
基本的にカワリーノさんの術中にハマった23・24話の流れと同じではあるんですが、同じだからこそ二度と同じ手にはハマらないのです。
そして、あの時は夢原さんが救ってくれたけど、今度は自分自身で乗り切るコトが出来る強さを身につけているのです。
かつて邪険に思った事もあったけど、今はもう友情に何の迷いも無いルージュ。
誰かに喜んでもらう事、そうすれば自分だって嬉しいのだとレモンさん。
仲間を守る事の強さ、そして本当はダークさんだって守りたかったという優しさを持つミントさん。
仲間がいるから自分も変われる。自分だけを信じていた過去の自分を切り捨てるアクアさん。
人と人との繋がりを否定するダークプリキュア。
人と人との繋がりを肯定するプリキュアさん。
仲間がいれば、一人で出来ないこともきっと出来る。
仲間のいるプリキュアさん達はその分だけ、鏡に写し取られた自分たちよりも成長することが出来るのです。
一秒前よりも強く、速くッ。爆風の中から出て来たレモンさんがカッコ良過ぎる!
ダークレモンさんの必殺技の、歌を武器にするというアイディアに、本家でも使って良さげだよなぁ~と思っていたら、人を傷付ける事に歌を使うなとレモンさん一蹴。かつては歌う事に迷いを見せていた子ですが、今や歌う事への理想と誇りが燃えているのか、チィッ!
ダークミントさんは、ミントさんのコピーのくせに攻撃技しか持っていないという、5人の中で最もオリジナルから遠い存在な気がします。本来、守りだけでは勝利など掴めない筈なのに、ミントさんはそれをやってのける。拳を握るよりも、守る事の方が強い! 熱いぜ、こまっつぁん!
アクアさんは剣戟戦。この前のアレは、映画の為の伏線だったのか…? そして軽く
ネタと被っていたのが恥ずかしい…。
ルージュさんは…バトルフィールドが一人だけシュール過ぎる気がした。
■ダークドリームさんの成長そんな他のダークさん達とは少し違った面を見せるのがダークドリームさん。
他のダークプリキュアさんらが、オリジナルプリキュアさん達の中にある弱さである闇をつつき回すのに対し、闇ドリームさんだけは、別にドリームさんの弱さを突いてはいない。
どうして仲間と一緒にいる時、あなたは笑っているの?
それはゴスロリ変装をして、のぞみ達を監視していた闇ドリームさんが気付いた事。
基本的にのぞみってのは、他の4人と比べて色んな能力値自体は低いんだけど、代わりに仲間や希望を信じる心は他の誰よりも強く、4人みたいに精神攻撃される闇もありません。
4人は闇キュアさん達に精神攻撃問答を受け、それに自ら答えを導き出すという構図ですが、対ドリーム戦においては、答えを導き出そうとしているのは闇ドリームさんの方だという転換の構図。
それは夢原さんから闇を引きずり出すコトが出来なかったという裏返しのような気もして…どんだけスーパーヒロインなんすか、夢原さん。
とにかく、闇ドリームさんは知りたがっているのです。
夢原のぞみの笑顔の理由。
自分のオリジナルな存在である彼女にはあって、自分には無いその理由を。
ドリームへ放ったエネルギー弾は片手で弾かれ、観覧車のハートの飾りを爆炎が照らし出します。
それはのぞみの笑顔の理由を知りたいと思う、闇ドリームさんの心が照らされているという象徴のようでもありました。
かっこ美し過ぎる画ですね、あれは。
友達なんてまだ知らない! と言う闇ドリームさんも可愛すぎますし(え?)。
闇ドリームさんは、笑顔や仲間を求めている。
しかし何ゆえ彼女だけが他の闇4人とは違って、自己の中にある欠落に気付いたのか…。
やはり一人だけ先に生まれ、監視役を引き受けていたというのが大きいんでしょうかね。
他の4人は、誕生した刹那、自分のオリジナルをミラーワールドへと引き込んで、何かを感じる間も無くずっと二人っきり。
対して闇ドリームさんは、仲間といる時いつも笑顔ののぞみを監視していた事で、「仲間」がいるかいないかの違いで、何かが…違うのだという事だけは感じたのやも知れません。
それが自分にとって良いか悪いかはともかくとして、「仲間」がいる事で何らかの化学変化が起こるというコトを知っている分だけ、彼女は「仲間」について知っている。つまり、その分だけ成長出来る。
オリジナルのプリキュアさん達がそうであったように。
知りたいと願う事は、成長の一端。
闇ドリームさんは、ただ鏡に写し取られた成長出来ない過去のドリームさんでは無かった。
それはもう、闇ドリームさんという全く別の存在として成長していたのです。
あぁ、闇ドリさんでいつ単独商品展開してくれるのかワクワクですね!
友達を知らないなら、友達になればいい。
ドリームさんは難しいことをいつも簡単に言うな。
しかも言うだけじゃなくて実行できるだけの手腕があるだなんて。
人と人との絆、結び付きこそが「希望」である「プリ5」において、こうして人と人とを結びつける天才ののぞみは、やっぱり希望のプリキュアなんだよなぁ…。
まぁ、敵方が寝返って死亡フラグ立ちまくりでしたけどね(おいッ)。
■そんなこんなで――思っていた以上に闇ドリさんが可愛かったすなぁ…
この映画は「無印」におけるキリヤ、「S☆S」におけるミチカオに該当する、敵方との調和を描いたエピソードだったんですね。
確かに「プリ5」では今のトコやってないですからねぇ…。ブンビーさんがそれっぽいような雰囲気を出しつつ、兆しが無いというスカシだし…。
その代わり、テレビでは毎度の「理想と現実」との対比構図は特に無かったようですね。まぁシャドウは別段ナイトメア関係無いようですけど。
若干の不満は、スーパープリキュアになったら、即エクスプロージョン決行だったコトかなぁ…。せっかく自由に飛べる羽根があるんだから、駆使して殴り合って欲しかったっすなぁ~。
でも、総合的によく出来ていて楽しかったですね。
最後、ちょっと切ない感じで終わるってのも「プリ5」ぽくなくて、でもだからこそ映画らしいと思える作りでステキでした。
ミラクルライトの演出が意外とお寒くなかったのも結構な好印象です、やはり。
さらに映画第五弾決定 …それをこの時期に言うという事は、おそらく劇場版MH第一弾と同じくGW時期公開なんだろうなぁ…。
個人的には年二回よりも、年イチで全力尽くしてくれた方が長い目で見てイイような気がするんだけどなぁ…色んな意味で安定するんじゃないかと。
人気があるウチに馬車馬のように働かせて搾り取るってのは…う~ん…。
ま、どーせ観るんだろうけどッ。
⇒
プリキュア5 各話レビュー
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コメント
短いですが
これだけ言いたくて、コメントを贈らせて頂きます
2007/12/08 18:50 by 仮帯 URL 編集
プリキュアのコンセプト
ダクプリ代表(?)のダークドリームなど同年代くらいの敵に対しては、ウザイナ~と思う人も多いでしょうが、彼女たちのお説教で、かれらを更生、救済させようとします。それが「プリキュア」のコンセプトなのでしょうね。
以下御覧になっていないかもしれませんが一応参考までに「劇場版 うる星やつら」から・・・。
2作目「ビューティフルドリーマー」
チビラムとあたるとの会話
→キュアルージュ対ダークルージュ
3作目「リメンバー マイ ラヴ」
クリスタル。運命の赤い糸。
友引メルヘンランド(プリンセスランド)
ラムの子孫という未来から来た少年ルウは
かれん(「きまぐれオレンジロード」のま
どか)と同じように幼い時から両親が仕事
で旅行中でいつもひとりぼっち。
ラムもスーパープリキュアになっていた?
キュアドリーム対ダークドリームとの観覧 車下での対決(ラムがエンディングで観覧
車のなかで眠っていた。
ラム「みんなで友引メルヘンランドへ行く
っちゃ!!」
のぞみ「みんなでプリンセスランドへ行く 事、けってい~!!」
ふたりとも指差しポーズが同じ?
などなど、長々とすみません。以前にも書込みしたと思いますが、とにかく、ダクプリ対決との終盤あたりに流れた悲壮感あるピアノ協奏曲、りんとうららに呼ばれるまでヒビがはいった赤いクリスタルを
見つめるのぞみ、エンディングが流れるまで、そのクリスタルを長々と見せるシーンが好きでした。
2007/12/08 22:19 by m-ohgi URL 編集
◇コメントありがとうございます!!!◇
ありがとうございます。
一人でもヒーヒー言っている人間が五人描くのはそれなりに大変だったので、少し報われました。
スーパープリキュアと悩んだりしましたが、闇ドリさんの可愛さに転ぶのは仕方ないですよね?
>m-ohgiさん
「魂の救済」てのはピッタリですね。
プリキュアの仕事は「滅」っするというよりも、「浄化」に近いだけに、今回の映画もそっていますよね。ただ、浄化された後は例外なく死亡フラグが立つという…(うわぁ)
ラストの切ないシーンはイイですよねぇ。
え、こんな雰囲気で終わるなんてプリキュアぽくない…という新鮮さを打ち付けられたようで嬉しく感じてしまいました。
あのクリスタルのヒビ、クリスタルの力があれば直そうと思えば直せるんだろうけど、夢原さんと心を通じ合わせた証として、あえて直さないんだろうなぁ…と思うと胸キュンですね。
何てこった、普通に面白すぎるぜ。
「劇場版 うる星やつら」観たと思いますけど…あまり覚えてないので観てないのと同義ですね、ボクは(あら?)。
2007/12/09 00:18 by TJ-type1@管理人 URL 編集
ドーデモイーコトデスガ・・・
テーマパークのミラーハウスはどちらも亜空間
の入口(ただし多少の条件はありましたが)。
予告編だけで本編には出てきませんでしたが、
シャドウのピエロ姿など。
「プリキュア」とは関係ありませんが、個人的に見て「美少女戦士セーラームーン」キャラクター設定のヒントにしたような感じがします。銀水晶、タキシード仮面、月の光の不思議な力など。
来年度の「プリキュア」のタイトルは「マッハGO!GO!GO!」主題歌は現在TBSで放映中の深夜アニメ「逮捕しちゃうぞフルスロットル」、というのは冗談ですが似たようなタイトルになるみたいです。「とにかく次回劇場版の内容は今回をうわまるモノでないと、東映アニメさん、あなただけは許せないッ!!」(by キュアドリーム)
2007/12/09 19:50 by m-ohgi URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
来期のOPはどんな感じなんでしょうか…。
やはり「MH」みたいにアレンジ違いなんでしょうか…人気があれば使い回す精神、プリキュアぽいですからねぇ。
ヒーロー番組でお馴染みの「偽者」を扱ってしまいましたので、次の映画はきっと殉職シーンが見せ場になると思います。
「さあ、コワイナーも倒したしナッツハウスに帰ろー」
「ハッ! のぞみさん危ないッ!」(ドンッ)
ズキューン!
「う、うららぁ――!!」
…みたいな。
2007/12/10 23:58 by TJ-type1@管理人 URL 編集