■LAST RUNベルトさんが封印されてから数日が経ち、進ノ介の特状課としての最後の事件は反政府組織ネオシェードのリーダの捜索。
グローバルフリーズのその日にも捜査していて、進ノ介がトラウマを抱える発端となった事件にも関わっていたネオシェード。詳しくはエピソード0を見なさい…と(ぇ)。
手がかりはネオシェードが手に入れようとしていた謎のアイテム“アイコン”…。
次期ライダーのゴーストと絡めつつ、進ノ介がベルトさん無しでも走り出せるようなった様を描いていて、特別編ながらきっちり最終回としての仕事もしています。
前回の本編最終話でも走り出す様は勿論描いていたけれど、こちらではより具体的に描いたという印象でしょうか。
番外だけど丁寧に拾ってくれているなぁと感じられます。
ベルトさんがいなくとも、進ノ介は刑事で仮面ライダーである。
ロイミュードが消えても、人間の中にある悪意とこれからも戦い続けるのです。
こういうウルトラマンタロウみたいな最終回好きですよ…うん。
前シリーズ「鎧武」の最終話では、紘太が去った後に新たなヒーローになる人間の姿を描いておりましたが、ややアプローチを変えながら同じ事が描かれているなぁと感じる。
ヒーローをヒーロー足らしめるのは特殊な能力ではなく、その想いがあるか否かなのだと。
そしてその想いさえあれば、人間はヒーローになれる。熱い…。
ネオシェードのリーダーを逮捕し、進ノ介は特状課を離れる。
霧子は「後に進ノ介と結婚して~」と、もう言及はないのかと思っていたそれが遂に回収。
これでMOVIE大戦はベルトさんの事だけに集中できる…(ぇ)。
基本的に前回までで全てやり切っている感があるだけにどうなるものかと思いましたが、上手い事シリーズから拾いつつ、しかし邪魔をしないようにと丁寧に作られていたかと思います。
ロイミュードも108体以上は倒しちゃいけないから、うまいこと逃げてたし(そこ?)。
前回今回、どちらを取っても良い最終回に仕上がっていると思います。
しみじみ。
■DRIVEバイクではなく車に乗る仮面ライダーと、キャッチーなコンセプトで始まった「ドライブ」。
終わってみると最後までそのコンセプトを貫き通して、一度もバイクには乗りませんでしたね。
単純に「車に乗る」ということではなく、「車がいなければ変身出来ない」とすることが「ドライブ」のアイデンティティを高める中核として機能したように思えます。
元はといえば、初代仮面ライダーの「バイクに乗りながら変身する」という2クール目からは失われた初期設定を、より現代的にリファインして企画の根源に据えたのが今回の企画なのではないか…と。
初代ですぐに失われてしまったそれを四〇年越しにリベンジしたのだなぁと感じます。
後半になったら諸問題でトライドロンの出番は減るだろうなぁぐらいの想定はしていましたが、トライドロンと融合するタイプトランドロンによってコンセプトをきっちり堅持する事で、最後まで企画ブレせずに走ってくれたなぁという印象を与えてくれました。
もうひとつの「ドライブ」の特徴と言うと、「刑事で、仮面ライダー」。
「仮面ライダー」でありつつ「刑事ドラマ」でもあるのです。
そんな「刑事ドラマ」視点での「ドライブ」はどういう印象だったかというと、やや複雑かな…という思い。
特にシリーズの前半はロイミュードとコピー元の人間が別個に存在していたため、フーダニット「誰が犯人か」という視点のドラマ的には、犯人が一人だったり二人だったり、コピー元の人間が意識的だったり無意識的だったりして、キッズ向けとしても刑事ドラマとしても設定がやや複雑で捉え辛いと思う事もしばしでした。
また一方、その複雑な設定を上手くトリックとして使った刑事ドラマらしい話もあって、これは文句なく膝を打つ出来だったりもしましたっけね。そういう話は「ドライブ」でしか生み出せない話になっているので、見ているだけで素晴らしい充足感が味わえます。
「刑事ドラマ」と一口に言っても、その中身は様々に分類されます。
犯人や被害者の心情に迫る人情モノ、銃撃戦やカーチェイスを売りにするアクション、探偵モノに近いミステリー、あるいは警察内部の対立を描く組織モノ。
では「仮面ライダードライブ」はそれら「刑事ドラマ」の何に最も近いジャンルなのかと言うと…全てです。
時に人情、時にアクション、ミステリー、組織…この一年間の中で「刑事ドラマ」と呼ばれるそれらの殆どを消化しているのです。
「探偵ドラマ」でもある「ダブル」の際はかっちりとフォーマットを作っていたように思いますが、「ドライブ」では各エピソードによってスタイルがころころと変化し、かっちりとしたフォーマットの中で作られている…とはあまり感じませんでした。
これを「迷走している」と感じる向きもあるかと思いますが、ボクは非常に「貪欲」なのだなぁと感じました。
というのも「刑事ドラマ」と「探偵ドラマ」では、圧倒的に「刑事ドラマ」の方がジャンルとして広くて厚いからです。
上述したように、「刑事ドラマ」と言うだけではどういったスタイルのドラマかは規定出来ないのです。
そんな中で「刑事ドラマ」を目指す「ドライブ」は、それらの全てを内包しようとしたのです。
非情に貪欲で、チャレンジャーだなと思わざるを得ないのです。
そのターゲットゾーンが広い影響か、ボクが「あ、刑事ドラマぽい」と思う範疇にすぽっと入ってくれることは案外と少なかったんですけどね。痛し痒しです。
しかしもって、「刑事ドラマ」でありつつ「特撮ヒーロー番組」でもあるというオリジナリティの構築は適ったのではないかと思います。
他の「仮面ライダー」には出来ない部分、他の「刑事ドラマ」には出来ない部分を構築していたと思います。
シリーズラストで進ノ介が真の悪は人間の悪意だと言及する部分がありますが、他の刑事ドラマでも戦う相手は人間の悪意ではあるものの、あそこまで明確に言及する台詞は使えませんもんね。
“刑事で仮面ライダー”の「ドライブ」だからこそ、より鮮明化するテーマだったと思います。
三条さんという事と「刑事ドラマ」というモチーフがあるので、ついぞ「ダブル」と比較してしまう向きが自分の中で強かったのですが、1年間の中で「ダブル」よりも人間関係の変化を強くつける事に注意が注がれているようにも感じました。
チョイスが仲間になるとか剛が敵になるとかの、関係性の変化が多いような。
縦軸よりも各話エピソードを重視する向きがある平成2期シリーズの中では、積極的に関係性が変化していたシリーズだったかと思います。
これは「鎧武」の良さも取り込んだという見方も出来るやもしれない…。
長期シリーズとして変身し続けるのですね…。
車に乗った、刑事で、仮面ライダー。
その実は非常に正統派の少年漫画のような熱っぽさを持ったヒーロー番組でありました。
前の記事にも書きましたが、それまで落ち着いていたかと思ったら襲ってくる終盤の尋常ならざる熱量が凄まじくて…いや、恐ろしいヤツでした…。
テレビでも劇場版でも、まだ来るのかまだ来るのかという熱さの連続でした。
血が沸騰するようなこの熱は、「ドライブ」の一つの特徴となったのではないでしょうか。
熱く炎が滾っているからこそのドライブと。
Fire Up,Ignition
てなわけで。
「仮面ライダードライブ」制作に携わった全ての関係者に謝意を贈りつつ、レビューはこれにて締めさせていただきます。
ここまで読んでいる方がいましたらどうもありがとうございます。
「ゴースト」は完全新布陣でまるで読めないなぁ…。
⇒
仮面ライダー 各話レビュー
- 関連記事
-
コメント
大団円
現さんとの階段でのやりとりも刑事ドラマの王道を持って来た感じ。仮面ライダーチェイサーがどんな話しになるのか、今から楽しみです。
2015/09/29 18:52 by 北風小僧のスナフキン URL 編集
ロイミュードとレプリカントが結構かぶる感じもしたので(^^;;
2015/09/30 20:05 by 葵ふたば URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
えらく真面目に作られていて、これはこれでいいんですけど、ドライブとゴーストのバタバタとした共演も見てみたかったなーとも思ってしまいました(欲張り)。それはMOVIE大戦でのお楽しみでしょうか。
チェイサーVシネにマッハ小説。主人公が変わる事で刑事ドラマの枠に捉われる必要が無くなるかと思いますが、それでどのように展開されるのかも気になりますね。
>葵ふたばさん
うう、残念ながらあまりブレードランナーは詳しくありませんで…。
以前に見たことはあるんですが漠然とした記憶でして。
主人公はレプリカントなのか?という疑問が付きまとう映画でもあるので、今度作られるチェイサーのVシネの方が要素としては近い可能性ありますね。
2015/10/07 00:12 by TJ-type1@管理人 URL 編集
「バイクに乗らない」から「変身しない」ライダーへ
ストーリーでは刑事ドラマの持つ全要素が見事に混ざり飽きさせない造りで、今回は『踊る』か『相棒』かそれとも『西部警察』かはたまた『本池上署』か(ゑー)予想がつきませんでした。うん、これもある意味てんこ盛りかと(マテ)
2015/10/07 22:07 by ミスターグラブシ URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
オールマイティ刑事ドラマになったのも仮面ライダーという1年間の枠があってこそでしょうかね。
各話完結エピソードと同時に連続ストーリーの必要もあるし、かといって人気があれば第2シーズンがあるというわけではないので、きっちりまとめて落とす事も出来るし。
色んな刑事ドラマの要素がありますが、ここまで寄せ鍋感があるのはドライブだけの刑事ドラマとしてのオリジナリティでもあるし、なんですよね。
2015/10/16 21:20 by TJ-type1@管理人 URL 編集