■愛ある限りプリンセスさんらが幹部御三方と拳を突き合わせていたその頃、ラブリーさんと神その他はミラージュさんの元へと辿り着きました。
ギリギリと歯ぎしりをしながらまずはラブリーさんを迎え撃つミラージュさん。
この世界とブルーを滅ぼす願いの為に。
この世は不幸に溢れている。
幸せは儚い夢に過ぎない。
幸福は一瞬で終わり、永遠ではない。
あとは不幸になるばかり。
ならばいっそ世界が完全に不幸になってしまえば、儚い夢を見ることも無い。
始まりは想い人に好かれなかったというありふれた不幸だったというのに、ここまでこじらせる事になるだなんて…。
ミラージュさんが普通の女子だったらこうまではならなんだのかもしれない…下手にプリキュアという恐ろしい力を持っていたから…。
プリキュア…人が持つには余りある力なのかもしれぬ…。
愛を消し去り、世界を不幸にして、ブルーを滅ぼす。
でもそれはミラージュの本当の願いではないはずだとラブリーさんは見抜きおる。
ミラージュはまだブルーのことが好き。自分も同じだから分かると。
これまで周りから「めぐみちゃんは神様が好き」という言及はありましたが、自分で「好き」だと言ったのは初めて…かな?
人を好きになった事で新しい世界が見える事もある。それによって満たされる幸福もある。
たとえその想い人に自分が愛されなくとも、その幸福までもが消えるわけではない。
たとえ両想いとなれなくとも得られる幸福はあるし、愛を否定する事は無いではないか。
ラブリーさんの言葉を聞いて、ふと恋愛とは違うけれど、アイドルとファンのような間柄を思い出してしまう。
ファンはアイドルの事が好きだけど、あれは別に交際しようとか結婚しようと思って好きになっているワケではないんですよね。どうしたって片思いだけど、ファンはその一方的な愛情でも幸せを感じている。
アイドルが自分一人を愛してくれないからといって、その幸福感までもが消えるというのであろうか。
相手が好きになってくれないなら、その相手も世界も全て滅ぼしてしまえというのでは、こじらせた危ないファンだものなー、ミラージュさん…。
その理屈では、ファン心理も、延いては宗教すらも否定する事になってしまうのだ…。
ま、ミラージュさんの言うそれは恋愛で、ラブリーさんの言うそれはアイドルファン心理的なそれだとしてしまうと、同じステージで語る事ではないのかもしれぬが。
でも相手は神で…プリキュアさんは急に唄い出すし…アイドルは偶像だし…やはりこれは宗教なのではないかという気持ちが膨らんでくる…。
「みんな幸せハピネス」は、みんなが幸せになること。
ならばいつも寂しそうにしているブルーもミラージュも、どちらも幸せになって貰わねば幸せハピネス足りえない。
全ての命の愛の為、とラブリーさんはミラージュさんを救おうとする。
しかしブルーとミラージュが幸せになってしまうという事は同時に、愛乃さんは幸せにはなれないという事。
それでは取りこぼして隙間から落ちる砂が、ミラージュから愛乃さんに代わっただけではないのか…という問題は残る。
ミラージュの強い憎しみ。それはミラージュに強い愛があるから。
愛を否定するミラージュさんには、誰よりも強い愛がある。
ラブリーとミラージュ、愛と憎しみの戦いは決着がつきました。
結局どちらも愛だった。こうなればカードが切れたミラージュさんは丸め込まれる他ありません。
同じみのミュージカル攻撃によってミラージュさんの憎しみは浄化しました…愛へと還元したと言うべきかしら。
囚われていた人々は戻り、プリキュア墓場も解放されました。
ミラージュさんの姿も戻り…でも服はそのまんまですね…。あ、自前だったんだ、それ…。
世界を滅ぼそうとしていた女王は消え、世界は救われ、神とミラージュは幸せなキスをして、世界には再び愛が満ちたのでした。
めでたしめでたし…。
■完…と。
まるで最終回の装い。
実際、ここでエンドマークを付けて次回から新番組…というのも悪くはないでしょう。だって世界は救われたのだから。
幻影帝国を滅ぼしてブルースカイ王国を取り戻し、囚われていた姉を解放し、いつも通りご飯をたらふく食べられる世界になったのです。
幸せハピネス!!
でも、その「幸せハピネス」から僅かだが取りこぼされた者もいる。
我らが主人公・愛乃めぐみさんもその一人。
世界は救われたけど想い人の気持ちは別の人へと向いたままで、お母さんの病気も治ったわけではない…。
まるで、周りを幸せにしながら自分は溶鉱炉に沈んだ「幸福の王子」です。
残りまだ二ヶ月あります。
多くの物語はハッピーエンドを迎えて終幕しますが、この「ハピネスチャージ」では、そのハッピーエンドから取りこぼされた人を救済する様までを描く物語…なのかもしれない。
だとすればここまでは前座で、真に伝えたい事はこの先に待っている。
もはや敵キャラもディープミラーさんしかいない中、この先をどう展開させるのかまるで見えませんが、このテーマは全ての物語に対して挑戦的だなとゾクゾクしてきた。
⇒
プリキュア 各話レビュー
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コメント
本当の戦いはこれから始まるのだよ…
それはさておき、
>このテーマは全ての物語に対して挑戦的だな
ヒーロー物は特に顕著ですけど、やはり「献身」は物語のモチーフとしては強力な推進力があって。
主人公が誰かの(何かの)ために全てを捧げつくす姿ってのは、やっぱり感動的だし痛快なんですよね。だからこそ、古今東西で使いまわされてきたわけですが…
ただ、捧げる本人の姿・意思は美しいけれど、周りからそれを期待したりましてや強制したりするのは残酷なのではないか…という疑問が、ここ最近いろんな物語でボチボチ見受けられるような気がします。オーズしかり、鎧武しかり。
そして、今のところこの疑問に「それだ!」とうなづける答えを提示できた例がまだない、と私は思っていて。
本シリーズがどういう着地点を見出すのか、というのは注視したいところかと。
2014/12/13 08:34 by 妄想オジサン URL 編集
>幻影帝国を滅ぼしてブルースカイ王国を取り戻し、囚われていた姉を解放し、いつも通りご飯をたらふく食べられる世界になったのです。
神やミラージュやひめやいおなやゆうゆうやファントムに囚われた世界のプリキュアは救われたのに、問題が解決してないのは失恋しためぐみとめぐみに片想いしてる誠司だけになってしまいましたね。
めぐみと誠司が、自分の幸せを考えるのがこれからの残された尺の物語のテーマかもしれませんね。
ドキプリのマナと六花、ハピプリのめぐみと誠司の関係は人助けを率先する主人公(幸福の王子)と主人公のフォーローする幼馴染(ツバメ)でとても似てると
思います。
もし六花ポジションが男の子で恋愛感情抱いてたらと
いう発想で、マナ&六花の友情を経て今度は幼馴染の関係を恋愛の切り口で見るために誠司のキャラが誕生したのではと予想してます。
六花も誠司も、思い入れが強い主人公(マナ、めぐみ)が別の方向見て(まこぴーやレジーナ、神)を見て嫉妬する所も共通してます。
一応六花は嫉妬の問題を「私もその気持ちに覚えがあるから。でも、好きな誰かを独り占めするよりも、好きな人が好きな人を、自分も好きになって、そうやって人の輪が広がっていく方が…なんか、いいじゃない」という博愛で解決しましたが、誠司のめぐみへの気持ちは博愛では絶対解決しません。
もし博愛でいいならブルーの好きなミラージュをめぐみも好きになって幸せになるという方法でいいかもしれませんが、めぐみは現に悲しい気持ちになってます。
幸福の王子のめぐみが自分の問題をどう乗りこれるのか見物だと思います。
2014/12/13 21:47 by 匿名 URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
自己犠牲や献身は確かにヒロイズムはあるけど、世界より個人というモノに重きを置くようになった最近の物語の中では、どうしても歪みを生み出すモノでもあるんですよね。世界は救われても個人は救われていない。
その歪みをどう解消したらいいのかに制作者は色々と試行錯誤しているのですよね。
最近は、一人ではなくみんながヒーローになるコト、というのが割と安定感のある回答として描かれているようですがプリキュアさんはどうなるか…。
>匿名 さん
博愛を是とする一方で、恋愛における愛での博愛は認められないという「愛」の矛盾があるので、誠司と愛乃さんの問題をどう持って行くのか…。あまり普遍的回答にまで持って行くのは難しいかもしれない、とも思っています。
みんな子どもの頃に抱いていたイノセントな気持ちを思い出してみよう、というテーマを「恋愛」モチーフで描いているだけで、恋愛それ自体をそこまで大きなテーマにしてはいないのではないか…と考えています。
だので、愛乃さんも実は子どもの頃に誠司が好きだったんだよ、と思い出してエンディングに向かうのではなかろうか…というのが現時点での予想です。
2014/12/19 19:31 by TJ-type1@管理人 URL 編集