2014年 08月 16日

「ドラえもん」を3Dアニメ化。

F先生の生誕80周年に合わせてのまさかの企画。
夏休み映画としては「ぼく桃太郎のなんなのさ」以来です。

宣伝では原作短編のオムニバスっぽさも感じさせて、果たして映画としてどうなっているのかと不思議でしたが、実際見てみると…なるほど上手いコト繋げたもんだと感心でした。


■「ドラえもん」という物語

ストーリーは、のび太の元にドラえもんが来るところから始まります。
てんコミ1巻「未来の国からはるばると」から描くことで、「何故ドラえもんが来たのか」「目的は何か」という、「ドラえもん」という作品の大根底を提示してくれる。
「ドラえもん」というと、ついつい「ドラえもんの秘密道具でてんやわんやする話」という印象があるけれど、「ドラえもん」という作品にも目標と物語が存在することをしっかりと明示しているのです。
つまり、この90分間で「ドラえもん」という物語を説明する映画でもある。

序盤でかなり感心した部分では、のび太・しずか・ジャイアン・スネ夫・ドラえもんといったメインキャラクターを、開始10分以内にどういうキャラクターで、どういう関係性かという事を全て提示しきっている事。短い時間の中で非常に明確に提示していて、とても感心しました。

「ドラえもん」のメインキャラクターと関係性を知らない日本人なんておそらく居ないだろうとは思いますが、しかし、それでもこの映画を見るだけでしっかり「ドラえもん」という世界が成立するように丁寧に作られていると分かる。
「原作読んでよ」とか「アニメで知ってるでしょ?」みたいな投げ方が無いのです。「ドラえもん」を全く知らない人間がこの映画だけを見ても分かるようにと、娯楽映画の基本をしっかり守って作られている。

世界で戦える3Dアニメを作りたい、という思いが監督たちにはあるそうですが、たしかに海外のドラえもんなんて知らないよという人が見ても分かるように作られているのなぁ。
しずちゃんの風呂シーンとスカートめくりのシーンが問題だが…。


■WORKS

これまで紙の漫画や2Dアニメで親しんできた「ドラえもん」のキャラクター達ですが、今回の3Dモデルは非常によく出来ているなぁと感じる。
いや、あんまり3Dアニメを見ないからそう感じるのかもですが、原作キャラのイメージと3Dとの摺り合わせが凄いなぁと。見る前はスネ夫の髪はどうなっているのだろうと不思議だったけど、見ている時に何一つ不自然に感じなかったな…。

特にこだわりを感じるのが藤子漫画特有の、口先がひっくり返っているアレや、「3」の口元。
ひっくり返った口先を監督曰く「ぽこ」と呼んでいたそうですが、当然、カメラに対しての顔の向きによって出現する向きは変わるので、全て手付けで行っているとの事。
3Dだけど漫画がそのまんま飛び出しているみたいで、見ていて楽しいこだわりだった。

またメイキング情報を読んで驚いたのですが、のび太の部屋や家、街並みなどの一部ではミニチュアセットを組んで撮影し、背景に利用しているとのこと。
基本的に3Dアニメの場合、背景も全て3Dで作らなければならないワケですが、ハリウッドほどのバジェットは無い中でクオリティを上げる手法として前作「ナキ」で考案されたとの事。

映画を見ている時、「なんだこの畳の質感! 本物にしか見えない!!」と感激していたんですが、アレ本物だったんですね…。
この手法は面白いなあ…。カメラワークが若干制限されるのだろうけど、その分バジェットが浮いて余力はキャラクターのクオリティ上げに専念出来るというコトなのだろうか。
おそらくハリウッドの3Dアニメと比較すれば、予算は10~8分の1ぐらいだと思うんですが、見ていてもそうは感じさせないのだから大したもんです。

昔からだけど、山崎監督と白組の、低予算でもハリウッドにケンカ売っていくスタイルとアイディアには感心させられる。


■ORIGINAL

ストーリーはドラえもんとの出会いと別れ、そこにのび太の結婚を主軸にして原作の短編エピソードを色々と繋ぎ合わせた内容。
各エピソードの描写はかなり原作に忠実で、台詞なんかも8割ぐらい原作台詞だと思われる。
本来あまり繋がりのない短編同士をのび太の結婚というテーマで並び合わることで長編の中の1エピソードに落とし込んで、自然な流れに乗せている。

描写や構図はかなり原作寄りで、漫画をそのまんま3Dにしたらこうなったであろうという映像を見ている印象。
ただ尺の関係もあるので、原作にある部分も切るところはバッサリと切っていて、一つ一つのエピソードに関してはあまり踏み込まない。

例えば「結婚前夜」のシーンなんかも、あれだけでも充分に良いけど、もっと丁寧に描けばもっと泣きのカタルシスがあるのだろうという気もする。気もするけど、全体の中で最も重要なのはのび太とドラえもんの話なので、長編の中の1エピソードとしてはあんなもんなのかなというのも分かる。

つまりテレビシリーズや渡辺歩監督の名作シリーズの方が、一個一個のエピソードに関しては丁寧なので泣きカタルシスは高いのだけれど、それは短編だから出来ることであって、長編でやることではないのだろうと。
どちらが良いとかではなく、長編・短編のメディア特性とバランスというのを感じたよ、というくだり。

原作にとても忠実なので、話自体は既に知っている内容。
一部、「お、そう来たのか」というオリジナル要素もありますけどね。
だので、話の新味に感動というのはボクとしてはありません。
もはや古典のようなモノですから。

まぁ、とはいえ当然「泣き」のシーンでは泣けますよね。
ひとつオリジナルのくだりでも「あ、それはずるい…」と思いながら泣かせてもらいましたが。
周囲のお客さんもかなり泣いておりましたので、話を知ってようが知るまいが「泣き」カタルシスは充分に果たせる映画だと思います。うん。


■「ドラえもん」がいる日常

なんか気付くと褒め倒しのように書いているが…。
まぁボクは原作派なので、これまで3本あったどのテレビシリーズよりも原作に近いアニメーションを見せられたら、「いいじゃん」って言うより他ないです。そらそうよ。
原作初期のちょっと下衆いドラえもんとか大好きなので、今回のドラえもんも楽しませてもらいました。

一部、今回の映画のオリジナル部分に咬みついている方もいらっしゃるようですが、あれは「映画」として成立させる為にとても重要な設定だと思います。
「ドラえもん」という作品はとても広大で、とても緩い作品なので、95分間の映画にするためには、縦軸要素として必ず必要になる。
原作漫画だとドラえもんが未来に帰る理由が一切されてないですからね。あれが無いと永遠にこの映画は終わらなくなってしまうのです。

宗教やら科学の話で、知らない人ほど「違う」と騒ぎ、知っている人ほど「そういう事もあるかもしれない」と受け入れるという話がありますが、漫画にも言えるような気がする…とちょっと毒吐き。

我々が想像する以上に「ドラえもん」やF漫画の世界は広いのです。
「こうだ」と決めつけた瞬間に世界は狭くなってしまう。

「未来は変わる」とドラえもんが言っていたけれど、「ドラえもん」の未来も変わり続けているのなら、広い世界の方がイイ。

毎週テレビシリーズが放送されて、毎年新作映画が公開される。
当たり前のように「ドラえもん」がそこにいる世界。
でもそれは決して当たり前ではなく、奇跡的なコトなのです。

その日常を大切にして、出来るだけ当たり前のようにしていきたい…。
そう思います…。


だから…まずは映画を見て、グッズや本を買おうぜぇ!!(ぇ)
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COMMENTS

Commented by at 2014-08-16 08:36 # Edit
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Commented by TJ-type1@管理人 URL at 2014-08-16 14:38 #- Edit
Title : ◆コメントありがとうございます!◆
>匿名希望さん
基本的に原作準拠なので、噛みつきたい人にとっては成し遂げプログラムしかとっかかりがないのではなかろうかと思うんですよね。で、それを正当化するために「F先生はそんなこと描かない」と、「原作者」という錦の御旗を使おうとするけど、F漫画をたくさん読んでいる人の方が原作者のダークな部分を心得ているので「むしろありえそうだが…」と反応していたりする気がします。
しかし、これをきっかけに「F漫画とは」を考えることが出来るのなら、「生誕80周年記念作」にも相応しいのかもしれません。

宣伝が気に食わないという意見もよく耳にしますが、泣けるコンセプトで作った映画を泣けると宣伝しているだけにしか見えないのですが…ううむ…。
Commented by ハナ URL at 2014-08-17 19:18 #- Edit
Title :
映画製作裏話がネットで公開されていますが要約すると3DCGの製作チームがもう一本映画をやりたいからドラえもんでやろうと山崎監督にプロットを依頼。山崎監督のプロットで藤子プロが感激し映画化なったと聞きますが、映画を見た人は原作通りだったと聞くとそれはつまり名作とされているいくつかの作品をただつなげただけのような気もするんですが。藤子プロは何に感激したのかがいまいちよくわかりません。それは感激するようなプロットでしたか?それにしてもどらえもんは本気になったらこんなにスポンサー企業が集まるのか、そっちの方が驚いています。トヨタ、パナソニック、JR,NTT,イオンなど。これらの企業の売上や従業員数合わせたら小さな国家一つができるんじゃないかと思うぐらいです。
Commented by TJ-type1@管理人 URL at 2014-08-17 22:42 #- Edit
Title : ◆コメントありがとうございます!◆
>ハナさん
つなげただけというとあれですが、その取捨選択や編集は当然気の使う作業ですし、当然編集には監督と映画のコンセプトがメッセージとして詰まっていると思います。違う人が編集すれば、やはり同じにはなりませんしね。
制作会社は新たなプロジェクトとして、藤子プロとしては80周年の記念作としての思惑が合致したから出来た映画だと思います。でなければそこそこ予算のかかる映画に投資するなんてリスキーでしょうしね。
Commented by ハナ URL at 2014-08-18 17:39 #- Edit
Title :
3Dドラえもんは正直バカにしていました。バカにしてたと言ってもただくだらないとかそういうことではなく、通常のどらえもんとはあまりにも違いすぎてそういうものかなと思っていました。しかし公開2週間でまさか32億円行くなんて全く思っていませんでした。これは夏休みのど真ん中に公開したから春休みの始まる2週間と春休みの1週間がまとめてきただけというレベルでないことがはっきりわかりました。正直僕は10億が限界だと思っていましたし言葉がありません。ただ現実ネットで言われている50億はそれでも難しいと思います。もともとどらえもんはこの40億壁が一番きびしいですし35年間40億円超えただけのが推定4作品ぐらいですから、50億円超えるというのはポケモン1作のように伝説引き起こし大人自体に来てもらわないといけないので35年たったアニメ映画の長老が本当にできるのか僕の予想を裏切るとうれしいです。
Commented by ハナ URL at 2014-08-18 17:57 #- Edit
Title :
とはいえ3D映画てどう見ればいいんですかね。230万人なら通常26億円ていど非常に単価が高い。3Dだから値段が上がってるのか本当に大人が来てるのか判断に悩みます。とはいえ3Dで値段が上がってるとはいえ2Dも選べますしそもそも人気がなければ高い値段はらって3D見ることもないですし、すごいことには変わりません。しかし、コナンルパン42億円ドラえもん40億円?。こうなると東宝もう一本やりたくなりますね。ポケモンかクレしんか。やってもいいのですが、実写映画コナンや実写映画ドラえもんは止めてほしいです。
Commented by TJ-type1@管理人 URL at 2014-08-18 22:04 #- Edit
Title : ◆コメントありがとうございます!◆
>ハナさん
どこかの記事に書いてありましたが、春映画は小学生以下が50%程度なのに対し、SBMドラえもんは20数%。20代・30代・40代が各20%程度だとか。
これで春よりも成績が良いことを鑑みると、従来のファミリー層はそのままに、これまであまり掴んでいなかった20~30代の層を取り込んだのではないかと考えられます。
最も理想的なカタチでマーケティングが成功した結果だと思います。ラッキー。
Commented by ハナ URL at 2014-08-19 19:13 #- Edit
Title :
映画見ました。想像よりずっと良かったです。あれだけ泣きを強調してたので、ずっとあの演出カナと思いましたが、意外と普通でした。帰りにレンタル屋さん寄りましたがなんと「stand by me ドラえもん」がレンタル開始してたんで何事カナと見ましたがTV版でした。しかし、映画公開中なのに映画の内容を隠すようなことしないですよね。堂々映画の内容を発表をするのがすごいですよね。そういえば渡辺監督がいま宇宙兄弟でドラえもんと戦ってるんですよね。またドラ史上大ヒットの映画と戦うなんて運が悪い気が。。。渡辺監督はどのような監督人生を送ってるのかわからないのですが頑張ってほしいです。ドラえもん最後は未来から帰ってくるんだけど、もう未来に帰らなくていいのでは?そのまま大人になってものび太の家に住み着いてもいい気がしますが。F先生が生きていてもどんな気の迷いがあってもまさか劇画おばQのような話は書かないと思うので。
Commented by ハナ URL at 2014-08-20 16:45 #- Edit
Title :
stand by meドラえもん一つだけクレームをつけるとしたらのび太をもう少しかわいくしてほしい。別にかっこよくしてほしいとは思いませんがテレビアニメくらいの愛らしいのび太でないとやっぱり少し気持ち悪いです。スネ夫はイメージどうり、アニメをCGにしたらこんな感じになるだろうなと思いました。静香ちゃんはイメージとは違いますがこれはこれでアリです。ジャイアンはアニメとは違いますしイメージとは違いますがこれもありです。
しかし、最近ドラえもんの最終回ぽい作品が多くてひょっとして本気で最終回になるんじゃないかと深読みしてしまいます。異論反論はあると思いますが僕的に映画最終回はひみつ道具博物館やstand by meドラえもんでとても会うんじゃないかと思います。
Commented by TJ-type1@管理人 URL at 2014-08-22 21:01 #- Edit
Title : ◆コメントありがとうございます!◆
>ハナさん
話自体は原作にもある通りですし、宣伝でストーリー面をプッシュしないのは知っている人も多かろうというコトがあるんでしょうかね。ドラえもんが帰っちゃうことをプッシュすると、帰って来るの見え見えですし…。

ドラえもんは個人的に、リニューアルしながらボクが死ぬまでは放送していて欲しいという気持ちばかりですね。
原作に最終回が無いのでイメージしづらいけど、やるとしたら「45年後」なのだろうかという気も。

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