10年ぶりのゴジラ映画。
シリーズ空白期としては最長期間です。
この10年、臥薪嘗胆の気持ちで待ち続けてきましたが、ようやっと期待に適うゴジラに出会えたのだなぁという思いです。
その期待とは何かというと…映像的なクオリティと、興行成績が良いことです(キリッ)。
いきなりどうしようもない事を書いているようですが、この10年以上、面白いとかはどうでもイイからとにかくヒットしてくれという祈りのような想いでゴジラの新作を待ち続けていたのです…。いや、マジです。
今回は、見事にその祈りを叶えてくれた…そんな思い。ゆえに、基本的に感謝しかないです。
こんなゴジラ映画を作ってくれた感謝感謝なのです…。
■From JANJIRA JAPAN, to America映画のストーリーは日本から始まります。
1999年に起きた日本の原発事故の真相を探るところから話は始まる。
99年なので東海村を想起させますが、富士山を望む海側の都市だったので、おそらく静岡県。
この静岡がめっちゃ大都会になっていてちょっと笑いました(ぇ)。
監督曰く、日本からアメリカへ怪獣を移動させるストーリーにすることで、ゴジラという日本のキャラクターをアメリカへ上陸させるという意図があったのだそうです。
この辺はエメリッヒ版「GODZILLA」でも日本の漁船を襲う事で近いことをしている気がする。てか今回のギャレゴジは、エメゴジとの類似点もちょいちょいあるので、その比較で見ても面白いです。
今作で登場する怪獣は2種類、ゴジラとムートー。
MUTOは未確認巨大生命体みたいな意味だそうです。
ちなみに作中、ゴジラもムートーも特に命名の理由が語られないのはちょっと勿体ない。日本の伝承にある名前であるとか、何かしらこじつけてほしかった気もする。ゴジラです、ご存じでしょう? みたいな当たり前の勢いで進んでしまう。
いや、ご存知ですけどね、ええ。
ゴジラとムートーは姿形こそ違いますが、非常によく似た生物です。
どちらも超古代の巨大生物で、放射能を餌とする。時にムートーはゴジラでさえも食ってしまうとのことで、両者は天敵の関係であったと考えられる。
新たにゴジラの物語をリブートする映画で、対戦怪獣が出ると知った時はちょっと驚きました。リブート1作目ならゴジラだけでも充分に成立するのではなかろうかと…。
映画を見て成程と思いましたが、対戦怪獣がいた方が映画として面白く見られるという点は勿論なのですが、本来ある“ゴジラ”というキャラクター性を“ゴジラ”と“ムートー”の二つに振り分けているのだなと。
■怒らぬ神獣今回のゴジラ、正直言うとそんなに怖くは無いです。
どちらかというと、米艦隊と一緒に並走して泳いでいたりして、ちょっとほんわかしそうになるほどです。
人類に対して怒りを抱いていないゴジラだなぁと感じました。
これまでのシリーズで描かれていたゴジラは、隙あらば人間の建物を壊そうとか、攻撃されたら200倍ぐらいにして返すとか、常に人類に対しては怒り狂っているという印象が強い。
しかし今回のゴジラさんは、近づいても攻撃して来ないし、非常に穏やかな性格に見えるのです。もはや人間という存在に興味すらない領域なのかもしれませんが。
対するムートーさんはといえば、直接的に人間を襲い、建物も壊し、ズル賢い、実に怪獣らしい性格だと言える。
1954年「ゴジラ」は“怖いゴジラ”の原点として語られるだけに、リブート版でも当然“恐怖”のゴジラが描かれるのだと思っていたので、怖くない怒っていないキャラクター性はちょっと意外でした。
ですが、映画の最後でテレビ画面に映るテロップで理解。
なるほど、そっちのゴジラか! と。
ゴジラというのはシリーズ30作の中でも悪役だったりヒーローだったり、割とまちまちなキャラクターだったりします。怖いゴジラしか認めないという人もいるけれど、ヒーローゴジラという一面もゴジラというキャラクター性に内包され、既に世界中の共通認識になっているのは歴然とした事実なのです。
今回の映画では、ゴジラの持つ「恐怖」と「ヒーロー性」をゴジラとムートーに振り分けることで、その両方の訴求力を満たそうとしているのではないかと考えられます。
この辺りは、やはり世界的にはゴジラ=ヒーローというイメージの方が定着しているからではないかとも思えますが。
怒っていない、穏やかなゴジラ像に初めは自分の中で違和感もあったのですが、この新作もゴジラシリーズ30作(海外版含)の流れの中にあるのだと思った時、ふと納得できたりもしました。
この「GODZILLA ゴジラ」の前作は「ゴジラ FINAL WARS」という映画です。
「GFW」の北村龍平監督は、この映画の中で今までゴジラがやっていないことをしたと言いました。それが「許し」。
「GFW」で、ゴジラは初めて人間を許すというアクションを見せるのです。
そして今作の穏やかゴジラさん…。
偶然か否かは分かりかねますが、妙に腑に落ちる流れだったので納得してしまいました。
許した後なら、一緒に仲良く泳いでも、まぁいいよね…と。
■KAIJU今作では、60年前の核実験はゴジラを殺す目的で行われていたのだと言及されている。
これに対して核実験正当化はオリジナルの意思に背くと仰っている方もいるようだけど、作中では原子力潜水艦がゴジラを甦らせたとも言っているので、冷戦下の軍事競争でゴジラを起こした点はオリジナルともあまり変わらないのではないかと個人的には考える。潜水艦か爆弾かの違いであろうと。
作中では原発事故、地震、津波といった描写もあって、完全に日本への意識が強く作られているというか…本当は日本人が作らなきゃいけないテーマなのになぁ…と何とも悔しい思いも浮かび上がる。
明確に災害=怪獣という視点で作られていて、人間は怪獣に挑むもまるで敵わないという姿が何度も描かれる。
クライマックス、主人公が怪獣バトルの間を縫ってミッションをこなしますが、それは怪獣を排除する為ではなく、負けの決まった敗残処理に近い作戦。
このクライマックスは、怪獣の強大さと主人公が最後まで動き続ける作劇をきちんと同居させているなと感じた。
日本で作ると主人公がボーッと怪獣が戦ってるのを見ているだけで終わりそう…。
■ゴジラ…見終わった後は不思議と爽快で、なんだか「ゴジラvsスペースゴジラ」を見終えた時のようだ…と感じました。
あの映画の「結構いい奴だったよな、ゴジラ」というラストの台詞は「なんでやねん!」という気がしましたが、今回の映画には合っているかもしれない。
映像のクオリティーは言わずもがなとして、硬派さと柔軟さを併せ持った、全てのゴジラファンの最大公約数に受け入れられそうな戦略性になるほどと唸らされる。
10年間待ったかいがあるゴジラ映画と言えるでしょう。
10年前はどんなに映画が面白くたって見向きもされないという辛い辛い時期でした。それを思うと、今作の世界60ヶ国ナンバーワンヒットという実績は、まるで夢でも見ているかのような心地でした。
幸いにして日本でも初週1位の冠を取ることが出来ましたが、その殆どはシリーズを何本も見ているファンだそうです。お前ら、そんなに数居るのに10年前は何してたの?という恨み節も若干あるのですが…。
ゴジラさんはミッキーマウスに次ぐ世界的キャラクターである事の証明は適ったのです。これはファンの贔屓目じゃなくて、割とガチでそうらしいです。
そんな鉱脈を10年も眠らせて… あ、また恨み節が…。
ただ個人的には…まだ足りない!(ぇ)
もっとゴジラを見せてほしい。
監督曰く、見せない事は一つの戦略だそうなので、まんまとハマッているのかもしれませんが…見たい…見たいのです…うぐぐ…。
ヒットのおかげで次作もすでにギャレス監督で決定済。
ゴジラの他に、ラドン、モスラ、ギドラが出るそうです。
そのラインナップだと金星人も出そうですが…どうなることか。
今回のゴジラのキャラクターだと続編作り易そうだなーと感じたので、3部作と言わず、いっぱい作って欲しい気もする。
日本でも怪獣映画が来てると勘違いした映画人が怪獣映画を作ってくれることを期待したいです…。
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