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『パシフィック・リム』

これまた間が空いてしまったけれどなんとか書こう。

日本のアニメや特撮も大好きだというデル・トロ監督が、そのオマージュを込めて作り上げたという巨大ロボットVSカイジュー映画。
とにかくバトル! バトル!! バトル!!! といった装いで、これは如何にも映画館で見なければ意味が無いという画の連続。
ちなみに3Dでの鑑賞だったのですが、まるで遊園地のライドアクションのような感覚。映画的というよりはアトラクション的で、小難しさ抜きに見て楽しい映画です。

見終わって一番に思ったのは「ザ・夏休み映画だな」と。
お話は、何故か地球にやって来た怪獣軍団を“イェーガー”なる巨大ロボットで殴り殺していくという…ほぼそれだけ。
「実は××だった!」みたいな二転三転する捻りのきいたストーリーテリングはありません。
怪獣が出た!殴ろう!! 怪獣が出た!殴ろう!! …の繰り返し。

そういう意味ではシンプル過ぎる内容なのかもしれませんが、だからこそ何も考えずに映像に浸れるという利点もある。
思想も世代も関係なく、誰でも楽しめるようにというハリウッドスタイルの直球というか、これぞ夏休み映画という雰囲気。

劇中でも「カイジュー」と言わせているぐらいに怪獣バカな映画なのですが、この怪獣は海からやって来ます。
そのくせ怪獣の正体は、別宇宙の侵略者が送り込んだ生物兵器です。
つまり“エイリアン”なわけで…だったら空から宇宙船と共にやって来る方が普通なんじゃなかろうかとも思いますが、カイジューはみんな海からやって来ます。
何故って…“怪獣は海からやって来るもの”という怪獣映画のお約束を守ったからなのです!

この辺に気付いた辺りから「うわ、なんてバカな映画なんだ」と嬉しくなってきますね。
合理性や整合性よりもお約束の方を優先させるなんて…バカだねぇ…ほんとバカだねぇ…とニヤニヤ。
日本の怪獣映画の場合ですら、海洋国家だから怪獣は海から来るしかないというそれなりに合理的な理由があるというのに…よくやるぜ全く…。

ロボットアニメの方は明るくはないのですが、香港決戦での「武器が無い」→「チェーンソード」のくだりで笑わせて貰いました。
ピンチになったら新装備登場!
攻撃した後の見え切りっぽい画!
そもそも実弾で倒せない敵を剣で倒しちゃう日本的感覚!
アニメを実写で撮ったらこうなったよという雰囲気がまんま出ていて笑う笑う。

どう考えても剣より銃の方が殺傷力高いのに!
このサービス精神というか日本的感覚の強さに「これアメリカ人が見て面白いの?」とちょっと心配になるレベル。実際アメリカ興行はそこそこだったらしいですが。

とはいえ、別にパロディ映画ではないので必要以上にオマージュを乗せているわけではなく、「もしロボットアニメを実写リアリティの解釈で作るとこうなります」という映画なのである。
「もっと必殺技の叫びが」とか「もっともっとケレン味が」とロボアニメ要素を求める人もいたようですが、それはもうアメリカ映画である必然性が無くなっちゃうもんね。
日本的怪獣映画やロボットの概念を、ビッグバジェットとハリウッドスタイルで再構築しているというごちゃ混ぜ感こそが面白いわけで。

この映画のドラマ部分を担っているのが、イェーガーの操縦。
イェーガーの操縦はパイロット二人が意識や感覚を繋ぎ合わせるドリフトという行為によって行われるという。
つまり「イェーガーの操縦」=「心を通わせる事」。
二人の心が通い、絆が深ければ深いほどにイェーガーは強くなれる! というこれまたアニメ的なんだけど、なるほどよく出来た設定。

日本のロボットアニメなんかでも二人組パイロットというのはあるけれど、それ以上に“パイロットとロボットとの意思疎通”が描かれる作品がとても多いと思う。
これも、パイロットとロボットとの心が通えば通うほどに、そのパワーが強くなるというコミュニケーションを描いている事に違いは無い。

日本では“ロボット”に対して愛着を持つ文化があるので、ロボットが意思を持つひとつの人格として認められ、コミュニケーションの実現が可能であると描かれている。
でもアメリカだとロボットは“兵器・兵隊”のイメージが強いから、愛着も薄いしコミュニケーション対象とは認識されていないのだと思う。

その文化の中でしかし“絆パワー”というモノを描こうとした結果、この二人組パイロット制になったのかと思うとなるほどなぁと感じる。

パイロットだけでなく、世界中の人間が国境を越えてカイジューに立ち向かうというのも絆パワーで熱いです。
心を通わして協力し合えれば人間に不可能はない! という直球の小恥ずかしいテーマが素敵です。
この直球のテーマを描けるのも世界市場を得ているハリウッドスタイルゆえだなぁと羨ましくもありますなぁ…。


某アナウンサーさんがこの映画に対して、

「僕らがアニメや特撮を見て『本当はもっとこういうビジュアルなんじゃないかなぁ…』と想像するしかなかったモノを実現してくれた」

と仰っていたのですが、まさにそうだなぁと。
日本の都市部を怪獣が蹂躙したシーンなんか、「これや!これが見たかったんや!」と拳を握らされる出来でした。

ミニチュア特撮はそれはそれで味もあるのだけれど、それは観客の脳みその中で「本当はもっとリアリティーのある映像で…」と再変換して自分を騙している節があるわけで。
「パシフィック・リム」はその自分への誤魔化しや約束を全て取っ払って、視覚神経からダイレクトに視床下部に伝わって脳内麻薬が出てくる映画だと感じる。

この映画はネットでやたら評判が良くて、タイムラインでもやたら賞賛とお薦めのツイートが流れて来るんですが、一度見てみるとその気持ちも分かります。
話の面白さやアクションだけで言うなら、もっと面白い映画もアクションの凄い映画もあるんだけど、「パシリム」をプッシュしたくなるのはそこじゃなくて、もはや「感謝」の域。
「子どもの頃から見たかった映像を見せてくれた」というその思い、その感謝の意が溢れ出てしまうのだと思う。分かる。

つまりこれは「面白い映画」というよりは「ありがたい映画」足りえている。
もはや一種の宗教映画にさえなっているのかもしれない…(え)。
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