■小説によって語られる「ダブル」の世界。
翔太郎にフィリップ、亜樹子、照井といったお馴染みの面子が文字の中に活きている。
まるで、この小説のシリーズがこれまでに20巻は出ているのではなかろうかと思うほどに、とてつもない安定感。
キャラクターの動き、台詞、そして全体を包むその安定感を含めて「うわー、オレの知ってる『ダブル』だぁーッ!!」と胸が熱くなる。
映像こそ無いものの、「仮面ライダーW」の正当な新作を味わえているという幸福感が溜まりません。
ニ、ニヤニヤが…止まらん…。
お話は、翔太郎の代わりにフィリップが探偵となって事件現場で捜査をするという展開がフィリップの一人称によって語られる。
現場に出向く探偵役と共に、視点も入れ替わって事件が描かれるのが、テレビシリーズとはまた違う小説らしさを目指していて楽しい。
事件は、とある大企業を経営する一族の遺産相続を巡るトラブル。
もちろんそこにはドーパントが絡み、尋常ならざる事態が巻き起こる。
資産家一族の遺産問題、まるで横溝正史かアガサ・クリスティか…。
そう。テレビでは仮面ライダーでありながら「探偵ドラマ」を真っ向から作っていた「仮面ライダーW」でしたが、今回の小説では仮面ライダーでありながら「探偵小説」というジャンルに真っ向から挑んでいるのです。
テレビシリーズのフォーマットがそのまま小説メディアで活かされている。
ファンにはニクイ、そして小説という媒体もきっちり活かしたコンセプトなのです。
これは上手い…そして、さすが「ダブル」だなと!!
推理小説…とまでは言わないまでも、「探偵小説」としてしっかりそのフォーマットも守っているのがやってくれます。
さらに最後まで読めば、テレビシリーズでちょっとだけ不思議だったあれの謎も解明されます。
くそ、どこまで後付けと構成が上手いんだ!!
■やりたい事が分かり易くて、ストンと落ちる。
テレビと小説という違いこそあれ、あの数学的な美しい構成をした「ダブル」が間違いなくここにあるのです。
久しぶりに「ダブル」の新作エピソードを味わえた楽しい一時でありました。
一冊で終わらせるには惜しい安定感です、本当に。
とはいえ、ひとまず26文字最後の「ダブル」。
キレイに数え終えて満足の一冊でありました。
⇒
仮面ライダー 各話レビュー
- 関連記事
-
コメント
Zを継ぐ者/風の代行者
>とはいえ、ひとまず26文字最後の「ダブル」。
>キレイに数え終えて満足の一冊でありました。
ここを読んでやっと目次の前の文章の意味に気付きました。こちらのレビュー一覧でもあるべき場所に収められており、自分がこの作品について理解が足りないと痛感しました。
2012/12/30 22:30 by 銀河水晶 URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
これはもうVシネと同じレベルの正当なシリーズに入れてしまって良かろうと思いますね。
平成ライダーの小説といっても、作家のやりたい事を前面に出す内容だからテレビシリーズと比較しても仕方あるまいぐらいに思っていたのですが、こんなもの初めに出されたらハードル上がってしまいますよ。
テレビ本編の邪魔をするでもなく、むしろ補完していて、理想的な小説版ではないかと思います。
2012/12/31 23:31 by TJ-type1@管理人 URL 編集
欠けてるピースてんこ盛り
さて、素直に読めば今回の物と48話の物が同一なのでしょうが、自分の中では『ビギンズナイト→(ミュージアム回収)→エターナル→(フィリップ回収?)→48話』、『今回の物→AtoZ使用(劇中内破壊描写あり)』という流れで渡って行ったと考える方が、AtoZでの現れ方として(まだ)自然な気がしたのですが如何でしょうか?
2013/01/13 16:32 by 北風小僧のスナフキン URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
後出しじゃんけんのくせに「これを読んでダブルの物語は完成するぜ!」という自信満々な感じが憎らしいですよ。ホント上手いですよ…キョウリュウジャー期待しちゃうよ…。
今回出てきたアレは、ビギンズナイトのアレをシュラウドが回収して渡したのではないでしょうかね。
エターナルが持っていたあれはVシネ(何年か前のエピソードという設定)で手に入れた別モノだし、AtoZで翔太郎が手に入れたのが小説のモノであれば、それをフィリップかシュラウドが修理して…ややこしい。
いや、AtoZのあれはおやっさんがくれたんです、それでいいんや!(なげやり
2013/01/13 23:50 by TJ-type1@管理人 URL 編集
ダブルはダブルでした
ダブル好きとしては一言言いたくて、今更ながらしゃしゃり出てきました。
テレビ放映時からの、フォーマットというか、ポリシーというか、作品の姿勢というかが、小説となっても貫かれていて、嬉しかったですね。
補完も多くあって「おお、そうだったのか!」と納得しながらニヤついて読んでいました。後付けのはずなのに、すごくピタッとハマるの見てると、設定だけは前からあったのじゃないかと思えてきます。尺の関係かなんかで、表に出なかっただけで。
そして、インパクト大だった、翔太郎復活…読んだのが夜中で、家族はみな寝ていましたから、非常にやばかったです。
今回のアレが48話に出てくるのでしょうね。AtoZのは…おやっさんでしょう。これだけピースがはまると一つぐらい不思議現象があってもいいや、という気がしてます。
2013/01/23 00:21 by ととろ URL 編集
お邪魔します。
この小説は先月から探していたのですが、講談社でも在庫がなくなったという話でなかなか見つからず、先日やっと店頭で購入できました。
読み始めたら驚くほど破綻もなくいかにも『W』という感じが楽しくて、色々と懐かしがりながら一息に読んでしまいました。後の「黒いアイツ」の登場を暗示するような台詞なども、非常に自分好みでした。
そして、TV版終了直後に発行された「公式解体新書」のガイアメモリ大全集のページとこの小説を照らし合わせてみると、作品中で使われたメモリの名前は全て過去に考案済みだったことにまた驚かされました。さすがにドーパントの能力は今回初めて考えたのでしょうが、TV版で使われなかった設定までこうして掘り起こして活用してくる辺りはさすがだと思います。
けれど、今回は何にいちばん驚いたかといえば、通販限定とはいえバンダイが「緑のアイツ」をさっそく商品化しようとしていることだったりします。
2013/01/23 22:48 by おおふ URL 編集
◆コメントありがとうございます◆
テレビでもそうでしたが、目指してる地点が凄く高いですよね。
テレビシリーズのファンを裏切らず、しかし小説としての新味と小説らしさを出して、ついでにテレビ本編で回収してないことも片付けようという…。あれもこれもそれも、やりたいことをみんな詰め込んでちゃんと整理されて出来上がっているってのが流石です。
こうなると三条さんのキョウリュウジャーも期待が高まってしまうんですよねぇ。
>おおふさん
終了した番組の新作ストーリーをこんな風に楽しめるとはありがたい企画です。
読み初めて早々に頭の中に「W-B-X」が流れてきますよ。
メモリの名前は事前に決まっていたのですか。「Z」をお題にしてそのメモリを使い、どういう話にするか…という作り方だったのでしょうかね。相変わらず逆算の作り方が上手いのぅ。
緑の人は塗装を換えるだけで作れるから、バンダイさんもリスク少なそうですね。
なんならサイクロンジョーカーより塗るのラクだし。
2013/01/24 19:25 by TJ-type1@管理人 URL 編集