■弥生 は march雨。
関東も梅雨入りとなった今日この頃。
七色ヶ丘中学校では自分の名前の由来や意味を調べてくるという宿題が出されました。担任の佐々木先生(英語)が同席しているのでこれは道徳の授業であろうかと。
名前の話は親子の関係を描きやすいのでプリキュアさんでもちょくちょく出てくる話題の一つですねぇ。
そんな中、黄瀬さんは困惑しきりでした。
自分の名前を付けた父親が既に他界している為、その由来を聞く事が出来ないのです。しかも母親含めて誰も「やよい」の名に付いて理由を聞いていないのだそうです。
親戚同士のコミュニケ-ション不和によって、この宿題は詰みました。こうなれば適当に理由を付けて発表するしかない。父親が弥生時代マニアだったとか、会計ソフトの開発に携わっていたとか…。
しかし、実は黄瀬さんは生前の父親からその話を聞いていたとのコト。
答えは何処かよそではなく、自分の中にある…。
これもまた「青い鳥」の回答に近いような気がする。
ハッピーはいつだって自分のそばにある…のかもしれない。
名前には親から子への想い、願いが込められている。
では、黄瀬さんの父親は娘に何を願ったのか…。
思い出したい気持ちと裏腹に、黄瀬さんの中の父親の記憶はどんどん曖昧になっていく。
そんな折に見せられる、黄瀬さんが子どもの頃に描いた父親の絵。
お父さんは娘と一緒にいたコトで何より癒されていたという。
一緒に遊んだり、アイスを食べたりといった、ごくごく普通のコトで。
そこで黄瀬さんは思い出します。
父親と一緒に教会へ行き、ふたりでバージンロードを歩いた事を。
父親から娘への感謝と、結婚式という要素で「のび太の結婚前夜」を想起させてくれたりする。
なるほど、「ドラえもん」ならば既に現代の古典として「おとぎ話」と同列にベースの話として扱っても許容されるという事か(え)。
「やよい」の名の由来。
それは母・千春のような温かで優しい人になるように、同じく春の名前として「やよい」と名付けたのだという。
優しさは人から人への愛の表現であるとピースさん。
父から娘へ、母から娘へ伝えられる優しさというメッセージそのものなのであるなぁと。
しかし、何故「優しさ」なのだろう?
それなら『キュアピース』じゃなくて『キュアジェントル』にすべきだったよ(え)。
黄瀬さんの記憶がよみがえると、さきほどは雨に打たれていた公園やベンチのカットが、晴天になって父と娘が戯れる幸福そうなカットに変わっている演出がゾクゾクしました。
いいぜぇ、演出が尖ってるぜぇ~…。
『同じモノなのに印象が変わる』という「スイート」的な文法も混じっていて、さすがスイートSDの境監督だぜぇとも感じます。
ついでに言うと、帰宅した黄瀬父が「ただいま」と酷く疲れた声で言う回想シーン。初見では、娘にまとわりつかれて嫌がっているのか? というネガティブな印象も与える可能性がある芝居なんだけど、父親の真意を知った上で見ると、実は黄瀬父が幸福を感じる瞬間のシーンであったと分かります。
ミスリーディングして、後で別の意味を加えるとゆー高度な演出が為されておりますです。
この辺は「スイート」を知っているとニヤニヤしてしまう演出だよにょぉ、うへへ。
名前の理由を見つけ出すという“自分探し”と、失った父親象の回復というドラマ…と思いきや、さらにそこに夫婦の話も加わってくるという多重的なドラマ。
これが「スパヒロ大戦」を書いたのと同じ人か…というほどに目いっぱいドラマが詰め込まれているなぁ(ちょ)。
でも『謎の解明』というミステリー的なストーリーの進行は「スパヒロ大戦」や「カブト」なんかとも共通している要素なんですよね。
うーむ、やはり同一人物ということなのか?(え)
■実は3月生まれだとか言い出さないかとヒヤヒヤしてました作中、フェアリードロップという名称や来海先生といった言葉で、他シリーズとの緩やかな繋がりを示して遊んでますね。
いや、これはきっと来年放送されるディケイド(仮)の為の布石なんですよ…そうだと言ってくれ…。
境監督のツイート通り、普段より静かで画も暗い話になっておりましたなぁ。
あと、料理の描写や障子の閉め方など、やけにリアリティがあったのも印象的。こういった、他の回とはまるで演出の違う毛色の話があるのは大変面白いです。振り幅は広い方が好きだょ。
次回はまたもいつも通りに戻って透明人間になるお話。
そんな話の方がいつも通りってどういう事だよ…という気持ちは置いておいて。
そろそろ「おとぎ話」という概念を失念し始めている今日この頃…。
もう顔も思い出せないよ…。
⇒
スマイルプリキュア 各話レビュー
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コメント
2012/06/14 07:23 by makiray URL 編集
愛と平和の名の下に
親御さんは子供に恥じない想いを込めること、子供達は想いの結晶である名前を逆さ読みしたりして、友達をおちょくってはいけないこと…。
親子二代へのメッセージ性が静かに、それでいて暖かく感じ取れました。
>これはきっと来年放送されるディケイド(仮)の為の布石
もはや1時間弱の映画1本では限度がある程人数も飽和してますし、TVシリーズ1年で余裕をもって捌いていくのが最善策でしょうね。
2012/06/14 09:47 by ゼノドレイク URL 編集
hard rain~止まない雨はない
会話シーンで人物を映さず風景のみの描写がいつもと違うなあ、と思っていたところに親子の回想が来たもんでゾワッとしました。
しかし黄瀬一家の絆だけでなく他の4人の家族についても短いながらしっかり描写したり、シリーズの他作品との繋がりをほのめかすような描写など、色々と凝縮された回でありながらスッキリとまとまっていたのは凄かったですねえ。
2012/06/14 20:30 by 銀河水晶 URL 編集
黄瀬勇一(境宗久)と言う男
名の由来の話をする勇一パパが非常に二クいです
或いは本当はやよいの結婚前夜に告げようと考えていたところ
バージンロードをやよいと歩いている内気持ちが盛り上がっちゃってつい話してしまったのかもしれませんね
そう考えるとママのように優しくというのはやよいの子供にも通じる願いなのかもしれません。
やよいという名はパパからママへの愛の証でもあって
当然パパからママへは照れくさくて言えないんですが
それが今回当のやよいからママに伝わる事ができた
やよいもママ千春も自分の名前が大大大大大好きになった。
この流れと〆がとにかく秀逸です。
謎と複線の提示と徐々によみがえっていく記憶そしてあっと驚く真実
常に視聴意欲を刺激してくるのは1年という作品全体でも1エピソードでも変わりませんね
とりあえず境宗久監督がローテーションに入るのなら
多少はモチベーションが上がります。
今回みたいな回はそうないでしょうが
2012/06/14 20:51 by snya URL 編集
弥生よ急げ!父よ
>そろそろ「おとぎ話」という概念を失念し始めている今日この頃…。もう顔も思い出せないよ…。
今度発売されるゲームソフトのテーマが「おとぎ話の世界を救う」ですから「アニメでやらなくてもいいや」って事は無いと信じたいです。しかし次回のモチーフが「透明人間」!おとぎ話=フィクションなら、あらゆる作品がモチーフになってしまう気もしますが…。 米村さんなら、そのうち石ノ森章太郎先生の「ちいたかわしわしごりらんらん」も、やりかねない!
2012/06/15 20:23 by 寒色派 URL 編集
◆コメントありがとうございます◆
まぁ、よくよく考えたら「愛」を語りつつ拳を振るうのが、今も昔もヒーローのやることなんですよね。
ハートキャッチでも愛と称してメリケンサックを付けたオーケストラさんが敵を砕いていたわけで…。
やはり、愛はためらわないことなのか…
>ゼノドレイクさん
名前は大切な贈り物…おかしな名前をつけた親はこの話を見て反省してくださいといった論調もあったりしましたが、「徒然草」に「最近の親は子どもに珍しい字を使って変な名前をつけようとする」といった記述もあって、古今東西、普遍的な問題もあるのだなと。
どちらかというとアニメよりも特撮的な手法が多いプリキュアなので、ディケイド・ゴーカイと成功したコンテンツモデルを活かさないはずは無いですよ。来年はディケイドに決まってます。逆にこれでやらなかったら、商魂が無いとガッカリするぜ(えー)。
>銀河水晶さん
いつもアホみたいに明るい雰囲気を醸すシリーズなだけに、まるで別のベクトルの演出がとても映えましたね。
素人目にも目を見張る演出が多くて見ごたえあります。これが前作シリーズDの力か…さすが。
というか、ゲスト演出だからむしろSDよりも自由に演出出来ているような気もしたり。
>snyaさん
どうして娘の名前の由来を母親に話していないのか?という疑問も、実は母親の名前自体が由来になっているから恥ずかしくて言い辛かったというコトなのかなぁと思えます。なるほどなぁ。
プリキュアの米村さんは一話に要素を詰め込むタイプですが、今回はまた随分と上手く歯車がかみ合って繋がったなぁと感心しきりです。
本当に特撮の時と同一人物とは思えないなぁ(おい)。
>寒色派さん
家族のテーマは今のところ緑川さんが一番濃いですよね。「絆」というテーマっぽいけど、一番家族を描きやすそうな感じ。ダンゴムシの家族とか含め。
番組自体はおとぎ話がメインテーマと聞いた記憶があるのですが、完全に何処へやら…だなぁ。いや、電王だって毎回の怪人モチーフはおとぎ話に繋げていたのに…。
入れ替わったり、小さくなったり、透明になったりと、実は「ベタなギャグマンガ」こそが本当のモチーフなのではないかと思えてきます。
2012/06/15 21:57 by TJ-type1@管理人 URL 編集