■かわいいジュドうわ~ん!ピッポォ~、リルルゥ~!!(泣)
…みたいにエモーショナルな事を書き連ねてると記事が終わらないので、その辺は出来る限り割愛(え)。
しかし、原作である大長編のストーリーにブラッシュアップをかけ、よりドラマティックな物語に仕上がっていたコトは特筆したい事実。
ということで、このレビューはひたすら賞賛するだけの記事になるんだろうな。
まぁ、それも詮無い事なのだよ…。
原作付き作品において意図を汲み取るのに分かり易いのは、原作との差異。
てなわけで、今回の映画で最も原作と違った部分であろう“ピッポ”から言及してみようと思います。
あ、ちなみに“原作”というのは大長編コミックスの事であって86年版の映画「鉄人兵団」の事ではありません、一応。ボク的には芝山ドラも楠葉ドラも所詮は原作漫画からの派生物でしかないという意識で見ていますのでね、ええ。
ピッポ――ザンダクロスこと鉄人兵団の土木用ロボット・ジュドの頭脳が、ドラえもんの道具によってヒヨコのようなキャラクターとなった姿。
おそらく、既に「鉄人兵団」の物語を知っている多くの人はピッポの姿を初見した時、そこはかとない不安を感じたと思う。何故ハードなストーリーで知られる「鉄人兵団」にユルキャラが紛れ込んでいるのかと…。
しかし、実際に映画を観てみると、ピッポの存在意義の大きさに感じ入ることでしょう。
ピッポがいないと物語が成立しないと分かる。いや、むしろリルルよりもピッポの方が重要じゃないかと…。
原作でのジュドの頭脳は、鉄人兵団に対抗する為にドラえもんの手によって改造させられ、ザンダクロスの人工知能となります。
しかしこの行為は残念ながら「鉄人兵団」の物語のテーマに反している。
無理やり改造して言う事を利かせるというのは、武力制圧で人間を支配しようと目論む鉄人兵団のそれと何ら変わらない。
リルルには行動や言葉でもって人間とロボットの調和を語りかけているドラえもん達だというのに、ジュドに対しては物理的に人格を変える非人道行為をしているのです…。
ドラえもんさん、怖い…。
その原作にあったテーマのぶれを修正する上で登場したのがピッポです。のび太達はジュドの頭脳を改造するのではなく、話し合いという行為によって自分達の事を理解させた。
これによってテーマはより明確になったし、キャラクター化によって感情移入もし易くなった。
ビジュアルを初めて見た時こそ不安がありましたが、実際にはジュドの頭脳をキャラクター化するというアイディアは一挙両得ともいえるほどナイスアイディアになっていたと思う。
これは思わず膝を叩いたよ…。
■ひとつめはあい♪ 一つ目は愛 あなたと私は一つ
二つ目に願い あなたはあなた わたしはわたし
三つ目に想う あなたはなに わたしはなに
あなたはわたし わたしはあなた ♪
冒頭から流れる「アムとイムの歌」。
明確に覚えていないのでグーグル先生で教えてもらったところ、大体こんな歌詞…らしいです。
この歌だけ聴けば物語のテーマもそのまま分かる親切設計。
たしか…四行目の歌詞はラストにだけ流れるんですよね…。
三行目で問いかけをして、四行目で回答している。
それ自体がこの映画そのものと言ってもイイわけで。
あなたと私は違うけれど、あなたと私は同じ。
人間とロボットは違うけれど、人間とロボットは同じ。
SF的な意味では、鉄人兵団が人間の歴史をなぞっている事。
キャラクター的な意味では、リルルとピッポの意識が通じている事。
物語的な意味では、他者とも理解しあえるという希望。
藤子F先生のSFには、自分の持つ常識がひっくり返った状況と向かい合わなくてはいけなくなるお話が多いです。それは国や宗教などの違いで理解し合えない人間への風刺であり、“相互理解(不理解)”を描いた話なのだと思っています。
でも、その不理解は少し見方を変えたり、自分に置き換えたりするだけで理解に変換出来るものだったりする。
「モジャ公」の人違いで殺されそうになる話とか凄い納得しちゃったもんなぁ…(え)。
要するに、リルルとピッポのシンクロニシティは、F的SFの視点から見ても上手いこと繋がった設定だなぁと思ったわけですわ。
あと、リルルは意外とドラえもん達と過ごす時間が少ないので、改心するところまで至るにはちょっと弱いのではないか…という弱点を、ピッポと同期させる事によって解決している。
ピッポと過ごした時間、出来事も全てリルルのものに出来るだなんて…なるほど上手いこと考えやがる。
■どちらから食べても美味しいです。のび太とピッポの絆、しずかとリルルの絆。
今回の映画では、その2本の柱を用いることによってドラマを多重的に厚くみせている。
原作ではしずか・リルルのメカトピア創世パートこそ感動的ではあるけれど、鏡面世界パートはのび太達がひたすら戦っているだけなのでドラマ性としてはやや薄かった。
しかし映画ではその部分がのび太とピッポの関係によって強く補填されています。
ただ戦うというだけでなく、あのベタな友情シーンによって涙腺がヤバイです。
こういう柱が二つあるドラマの場合、二兎を追うもの一兎も獲ずが如く、どっちつかずの感じになってしまう危険性もあると思われるのですが、リルルとピッポが意識を共有している半身キャラとして描かれている為、柱は二本あるように見えて実は一本であり、ブレずにドラマをまとめる事が出来たのではないかと思います。
あと、クライマックスシーンで博士の言を受けず、リルルが自ら“相手を思いやる心”をインプットするシーンも原作にはありませんが、なるほど上手いシーンです。
これまでのストーリーの積み重ねによって上手いこと問題を解決する、お手本のようにキレイな物語構造になっていました。ぎゃふん。
■モアモア…なんかもう残念なぐらい褒め褒めして自分でも気持ち悪いわ…(えー)。
しかし、どの要素も見事にピースがピタリとハマッているし、原作の弱点を補強し、よりドラマティックになるように仕上げられているのは事実です。
だもんで考え出すとひたすらに「ちくしょう、うめえ…」と言うほかないのだよなぁ…。
あの原作からリルルとジュドの友情という部分を拾い上げて昇華させているのも見事なものだけれど、リルルと鳥キャラのピッポを合わせることで“天使”にしているのも上手いんですよねぇ…。
いやぁ…やっぱり寺本さんパねえっす。
EDロールで初めてミクロスが出ていない事に気づいたもん…(え)。
てなわけで…ただただ面白かったです。泣ける。
上映終わった後、お客さんが鼻をスンスン鳴らしてるのも当然ですよ。
さらにはギャグシーンで軒並みお客さんがウケていたの印象的。
ガッツリと何処も外さないで持っていくなぁ…。
あ、でもさすがに「か、勘違いしないでよね!」は笑ってる人が分かれていたけど。
とまあ、そんな映画でした…。
驚異的打率だよ…。
監督を信じてよかった…。
でもって、恒例、来年の為のオマケ映像。
おそらく順番的にもオリジナルというコトになるのでしょうね。
一応「雲の王国」にモアは出ていたと思うけど…まぁ無いわな。
スタッフロールを信じるならば、来年の監督はおそらく楠葉監督…。
どんなお話になるのかと期待を持ちつつ、今年の余韻に浸りたい…。
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コメント
ジュドはリルルより早くのび太と出会いますから原作の扱いはピー助の卵かち割るようなものです
歌詞が違うのは歴史改変の影響を表しているのではないかと考察されている方もいました
そして寺本監督は巨大ロボットアニメを作った数少ない女性監督の仲間入りですね
来年はもう期待してないので寺本監督の次回作が早く見たいです(笑)
もう信者です
2011/04/07 00:25 by kamosi URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
ラストの歌詞は改変なのか、単にラストだけの初出なのか判然としかねるのですが…。
歌詞を確かめるためにもっかい観ろってことなのかしら…くそぅ。
今回の映画は86年版とも違って、ロボットアニメとしての魅力もあるのがよかったですね。ザンダクロスVS鉄人兵団母艦の戦いはひたすら燃えました。シンエイ作画のロボットなのにカッコイイぜ…。
寺本監督はテレビシリーズでも外さない鉄板の演出家さんなので、ずっとドラえもんに居てほしいですねぇ。
これはもう恋だと思う(え)。
2011/04/07 01:08 by TJ-type1@管理人 URL 編集
映画はおもしろかったのですが、、、
2011/04/07 03:20 by ハナ URL 編集
ピッポをどこかで見たことあると考えていたら、ガオの序盤少しだけ登場したピヨちゃんに似てると思いました。一目見ただけで「何このキュートでラブリーな不思議生物!」と衝撃を受けました(ゑ)。
くそう、ロボット魂ザンタクロスだけじゃなく、ねんどろいどピッポも欲しくなってきたぞ(オイ)
2011/04/07 20:42 by ミスターグラブシ URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
先日ニュースで見たのですが、4月に変わる前後から映画館の集客が戻ってる、もしくは前年比でむしろ伸びているという状態が起きているそうです。交通が完全回復してないとかの影響で、近場で楽しめる映画館にお客さんが集まっているんだとか。
そう考えると、思ったよりは興行のダメージは抑えられるのかもしれないです。まぁ全くダメージ無しというのは無理でしょうけれど。興行は制作費の回収さえ出来ればとりあえず良しと考えないと…。
一番は観た人が面白いと思ったかどうかじゃないでしょうか。おそらく今回の観客満足度は相当高いものと思います。まぁ、そういう統計は「ぴあ」しか取っていないでしょうけれど。
>ミスターグラブシさん
面白かったですよ。クライマックスでのザンダクロスの活躍もカッコイイです。「ドラえもん」とも思えぬロボットアニメのバトルでした。
個人的には遠景の構図で町や山を歩くザンダクロスが怪獣映画っぽくて燃えました。寺本監督はツボを心得ていらっしゃる…。
映画館でもDVDでも機会がある際はぜひ一度ごらん頂きたいです。
ピッポはなめてかかるとまんまと号泣させられます。
2011/04/08 00:08 by TJ-type1@管理人 URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2011/04/08 22:43 by 編集
◆コメントありがとうございます!◆
人魚はシナリオ上ではちゃんと筋が通っていたんじゃないかなぁという気がするんですよねぇ…それ以降の作業で後半の構成をちぐはぐにした何かがあるのではと思うのですが…後半だけ再編集すれば分かりやすくなりそうだと思うんですが…。
そういえばドラ映画ってまだブルーレイになってなかったんでしたっけ?
ウチにもデッキがやって来たので、ぜひ検討して貰いたいです。
2011/04/09 23:12 by TJ-type1@管理人 URL 編集
2011/10/22 14:47 by ハナ URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
原作者の方が亡くなると、どこまでがセーフでどこからがアウトなのか確認できないので安全策しか取れなくなるというのはあるんでしょうね。パターンとしても過去の流用はOKだとしても新しい事はし辛くなりますし。
個人的には、アニメと漫画は別物で、所詮アニメは原作からの二次創作だからアニメスタッフの好きにやればイイとか思ってしまうんですけどね。色んなアニメで原作に気を使ってるのをみて、ちょっと面倒くさいんじゃないかソレと思ったりです。
2011/10/24 21:32 by TJ-type1@管理人 URL 編集
どうしてああなった
本来のプロットはとてもよくできていたことが分かります。
2012/04/13 16:04 by kanata URL 編集
◆コメントありがとうございます◆
読んでいないのですが、当初の計画ではもっと分かりやすかったのですね。
映画を見ると、シナリオがおかしいというよりも、編集がおかしいという印象だったんですよねェ…。
仮編集したら2時間越えしてたからバッサリ切った、とかそんな理由なのかしら…。
2012/04/13 19:47 by TJ-type1@管理人 URL 編集
私も半信半疑で購入したのですが
まさに編集がおかしかったのだろうなと感じてしまいました。
コミックスの方は分かりやすいというか、綺麗に筋が通っています。筋書きはほぼ同じでありながら、こちらは良作と呼べる内容でした。
ただいくつか余計なシーンを挿入するため必要なはずの説明をピンポイントに削り、更にとても大事なシーンを一つ不適切な位置へ移動したため、映画の方は支離滅裂なことになったようです。
コミックスの方がおそらく当初の脚本に近いと思われるのですが、これが真相だとしたら脚本家の方も気の毒だなと。
2012/04/14 00:04 by kanata URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
映画は公開の1年前にシナリオが出来ているとも聞きますので、シナリオをベースに漫画にしているのでしょうかね、やはり。。
しかし漫画に比べると、プロジェクトとして大きい映画の方が制約が多いので、結果としてああいう出来上がりにならざるを得なかったのであろうとは思いますが、やっぱり元の話を知りたいです。
せめて、ぎょしゃ座の伏線回収ぐらいは…。
2012/04/14 19:40 by TJ-type1@管理人 URL 編集
原作は漫画で読んでいたので大体内容はわかっていたのですが、原作の肝の部分は変えずにドラマに昇華する手腕は凄いですね…。演出も神がかっていたと思います…。
またこのブログを参考に映画を探してみたいと思います。
2014/12/05 16:42 by クズマ URL 編集
◆コメントありがとうございます!◆
見る前の不安が見終えた後には一気に無くなっているかと思います。
キャラクターも上手い事配置されているので、逆に原作にはなぜヒヨコがいないのかとすら思えてきますからね。
大胆に新要素を盛り込みつつ、しかしパワーアップしている様が非常に爽快な映画だと思います。
2014/12/05 22:02 by TJ-type1@管理人 URL 編集