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2010年 08月 07日
最初のカット、あの霧笛の音を聞くと心が騒ぎだす。

「踊る」始まったな…。


相変わらず気付いたら観に行ってから随分経っている。
しかし信者としては心ばかりでも記事に上げるのが信仰の形であろう。

いや、信者って言ってもアルティメットDVD-BOXや青島コートを買うぐらいの底辺の信者だけれどもね(え)。
そう思って簡潔に書こうと思って長くなるのはどういう陰謀なのだろう。4000字も書く気は無かったんだ本当に…(グスン)。


「踊る大捜査線 THE MOVIE 3」

それは「踊る」が死んで、新たな「踊る」に生まれ変わるお話でした。


■「新・踊る大捜査線」

正直、これまでのシリーズと比べるとクライマックスに感じるカタルシスは少し控えめ…と思う。

今までのシリーズのクライマックスといいますと、ドラマシリーズにしても劇場版前二作にしても、“本店と支店の融合”という部分にドラマの盛り上がりが用意されておりました。

青島と室井さんが初めて現場で一緒に捜査するテレビ最終回。
室井さんが幹部の制止を振り切って青島に被疑者逮捕を命ずる劇場版一作目。
本庁と湾岸署の捜査員が一緒に地図を作る劇場版二作目。

水と油である本庁側、所轄側の人間がクライマックスで協力する。
それが今までの「踊る大捜査線」で描いてきたドラマです。
もっと言えば、一番重要なゴールは“両者の協力”という部分だので、犯人逮捕という部分はさほどクローズアップしなくてもよいのです(え)。
そこンとこが、「踊る」が刑事ドラマではなく警察ドラマと呼ばれる由縁。「刑事ドラマ」のように事件や犯人を描くのではなく、警察官同士のドラマによって物語を成立させる。
だから「踊る」の犯人は結構あっさりした酷い動機の人たちが多いです。そこに人間性は求められていないから…。

だので、今回犯人側の視点がリアルタイムで描かれていた事には少なからず驚いたのです。おい、なんか刑事ドラマみたいなコトしてるぞ!って(え)。
そんな所にも今までに無い新しさがありありと出ておるのですなぁ。

ドラマのクライマックスという部分に話を戻すと。
今回の映画には本庁と所轄が協力して犯人逮捕に向かっていく、みたいなそういうお馴染みの盛り上げはしていません。

今回は、青島俊作という刑事が死に直面しながらも立ち上がり、強行犯係の仲間と共に捜査し、犯人に対峙して対決する…というそんな感じの展開。本庁とか所轄とかそういう話じゃない。
「青島俊作」という人間に全てが集約されていく、そういう物語。

これが今までの「踊る」に無い新たな部分なのだよキミ!

主役の物語を描いて何が「新たな」だと思われるやもしれませぬが、「踊る」ってのは、青島が周囲に影響を与えて変化を促していくという物語なので、青島自身はほとんど成長しないキャラクターとして描かれている。
だからテレビシリーズなんかでも、雪乃さんやすみれさん、和久さんの抱えている事件を青島が解決してくれるという話はあるけれど、青島が抱えている事件ってのはありません。

それが今回は、過去、青島が関わった事件の犯人の釈放要求だったり、過去の犯人との対峙だったり、青島俊作という人間に全てが集まってくるお話。ある意味ではオーソドックスな刑事ドラマ的お話なんだけれど、「踊る」においてはこういう方法論は今までに無かったコトなのです。
どうしたって新しい「踊る」と言わざるを得ないワケだ、これは。

しかしながら。
前の劇場版とかと比べると、話が組織じゃなくて個人に集約されてしまう分、なんか矮小化してる感ってのはあるかもしれません。

よりイメージを明確にするのであれば、これは「踊る大捜査線」というよりも「係長 青島俊作」という映画なのではないかと思う。
いわば「交渉人」「容疑者」のスピンオフシリーズの流れに近い。
まぁ主役なのでスピンオフというカタチには出来ないのだけれど。


■青島コートはひるがえる

今回の劇場版のテーマは「死」。
和久さんの死、青島の死、犯人の死。

上述の通り、今回の映画は今までの「踊る」とは違う、「新しい踊る大捜査線」なのだと思います。
そして新しく生まれ変わる為に、今までの「踊る」は“死ぬ”必要があった…。
そういうお話でもあるのですね。

今回の犯人は、過去に青島が捕まえてきた犯人の釈放を要求してくる。

青島が今までに捕まえてきた犯人。
これは青島がこれまで成し遂げてきた刑事としての歩みだし、青島という刑事の誇りそのモノ。
それを釈放せよというのは、誇りを消す、青島を殺すに等しい行為なのです。同様に、青島の拳銃を奪う行為も、青島の刑事としての誇りを奪う事に等しい。

今回のクライマックスで、青島は犯人に「君の死には誇りが無い」と言う。

青島の誇りとは、今まで捕まえてきた犯人であり、刑事のいろはを教えてくれた和久さんの事であり、刑事としての魂の事であり、あのコート。
和久さんは亡くなったけれど、刑事としての誇りは生き続けている。和久ノートというカタチになりながらも。
たとえ死んでも、誇りがあればその魂は生き続けられる。

でもその誇りが無ければ、たとえ大袈裟な死に方をしても誰の心にも残らない…。
だから、真奈美が世界中に広がることはありえない…。

たとえ死にたい奴でも死なせない。
一度捕まえた犯人は青島の誇りであり、魂だから。


■踊る→踊る

…ちょっとメタ的な見方をすると。

今までに捕まえてきた犯人ってのは、今までの「踊る」の各エピソードを彩っている存在で、これまでの「踊る大捜査線」そのものを象徴しているように思える。
そう見ると、それらの犯人の釈放や射殺ってのは、「今までの『踊る』を殺す」って意味が含まれているかのように見えてくるのです。

新しい「踊る」に生まれ変わるからこそ、ここで過去の「踊る」を全部脱ぎ捨てる…そんな風に。

確かに。
この7年の間にいかりやさんが亡くなった事で、どう頑張っても今までと同じ「踊る」を作り上げるなんて事は不可能になってしまったのです。
強行犯係なんて、テレビシリーズと同じメンバーは青島しかいなくなってしまった…。てゆか、暴力犯係は変わらなさ過ぎだろう…。

だからこれからも「踊る大捜査線」を続けるのであれば、どうしてもここで一度リ・スタートをしなくてはいけない必要性が生まれてくる。そしてそれは、今までの「踊る大捜査線」を殺す事を意味していたりもする…。

お客は当然のように「今までと同じモノが見たい」と思って来ているだろうから、これは結構な英断だったと思います。過去の「踊る」を殺すって事は、今までのファンを裏切るってコトでもありますからね。いやー、これはエライこっちゃやでぇ…。

今回の劇場版はまさに「旧・踊る」と「新・踊る」、両者の「死と創生」が同時に描かれている。まさに「引越し」の物語。

今までの「踊る」は死んだのです。
爆発した湾岸署とともに。

でも、全部死んだわけじゃない。
青島が劇中で守り抜いた「誇り」「魂」は、新しい「踊る」でも変わらずに生き続ける。

引越しのさなかに失われたかと思われていた青島コート。
要らないモノの箱にしまわれていたけれど、これだけは青島の元に戻って来た。

新・湾岸署という新たな「踊る」のステージにおいても、青島の魂、「踊る」の魂だけは変わらない。そう高らかに宣言されている。

うわぁ、ここまで新たな始まりを意図する作りをしたからには、ここから新シリーズとしてガンガンやってほしいよなぁ。5年とか7年は長すぎる…。出来ればテレビで毎週観たいとすら思う。観たいのぉ、観たいのぉ…。

まあ、出演者の顔ぶれ的にテレビが無理ってのは分かってるんだけどさ…グスン。


■ヤツらを解放せよ!

テレビから数えて13年…。
歳を取るはずだ…。

今までの犯人がいっぱい出てくるのは勿論ですが、青島が健康診断に行けと部下に言っている場面だとか、長く観てるファンに嬉しいシーンもありがたいですのぉ。

一番ビックリしたのは、EDで今回の犯人のキャスティングを見た時。
「え、アイツ!?」…まさに息を呑んだ瞬間だった…。
青島が刑事になって初めて捕まえた犯人じゃないか…。ソイツが今回の犯人だなんて…なんという残酷な展開。
これもまた「過去の『踊る』を殺す」って意味合いになるンじゃろうなぁ…。うわぁ、でも哀しいわぁ…。

上の方にも書きましたが、今回は青島の映画だった為に他の人の活躍…特に室井さんなんか出番が少ない少ない…。
一応お約束の秋田弁も入れてくれていましたけれど、どうにも偉くなりすぎたか…。
いや、偉くなってるのは喜ばしいことだけれど、その所為で青島らとの絡みは極端に減るジレンマが生まれる罠です。まさか室井さんがゼーレの仲間入りとは…。
上に立つ者は孤独…って神田署長も昔言ってましたか(え)。


「踊る大捜査線」というのは元々“それまでにない刑事ドラマ”を目指して作られた、冒険心の塊のような作品でした。
それが思いのほか人気を集め、劇場版もまさかのヒットを飛ばしたコトによって、「ファンの期待を裏切らないように作らなくてはいけない」という意識が制作側に結構強まってしまったのではないでしょうか。
冒険したいという気概で「踊る」を作ったのに、「踊る」の所為で冒険できなくなってしまった…。

劇場版一作目なんかは、テレビと違う事をしようと考えていたけど、結局ファンの気持ちを考えて同じ事をしたとか何とか聞いた事があります。制作側としては「同じコトばっかりでマンネリ」という気持ちも幾らかあったとか。

だから今回の映画というのは、これまで育ててきた「踊る」を破壊することによって、再び原点に立ち返ろうとしたのではないでしょうか。
同じ事をするのではなく、新しい事をすることこそが「踊る大捜査線」であるという「誇り」に立ち返るために。

この劇場版は「踊る大捜査線」の最終回。
そして新たな「踊る大捜査線」の第一話。

映画のラストカットで青島は走り出す。

「踊る」始まったな…。
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